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第82話の5『車内3』

 「いや……俺が金色なのは大した話ではなくて、すでに霊界神様や精霊様が魔物に連れ去られていたって事が重要なんだと思います。リリーさんいわく、ルルルが神殿にいてくれてたら、霊界神様が魔物に屈するはずもなかったとも言っていました」

 

 やや話が脱線したので、俺は強引に話を本題へと押し戻した。ルルルと精霊様たち、また霊界神様の関係性については俺も知らないが、それによりけりでルルルがさらわれた今となって、最悪の事態を招く恐れはある。俺の話を受け、アマラさんが別の視点から予想を立てた。


 「始末した……ではなく、連れ去った。そこに四天王の目論見があるのかな」

 「利用しようとしているんすかね……ってことは、神様も精霊様たちも、すぐに命をとられる訳じゃないのかも」


 ミオさんの言う通り、魔物たちが邪魔者を始末したいのであれば、神殿には血なまぐさい光景が広がっていてもおかしくはなかったのだ。でも、予定外に誘拐されてしまったルルルにしても、拠点へ連れ帰ろうという敵なりの意思が感じられる。霊界神様や精霊様の力を悪用する計画が動いているかも解らない。


 『ちなみにだ。テルヤ君。四天王の素性は見えているのかね?』

 「いえ、博士。部下の1人のカリスという魔物が漏らしたんですけど、解っているのはクロルという名前だけですね」

 『クロル……それは、クロル・ホルンではないのか?』

 「……?」


 博士が四天王の名前に反応を示す。有名な人なのかな?詳しく聞かせてもらおう。


 「お知り合いですか?」

 『……いいや。名前が似ているだけで、勘違いやもね。クロル・ホルンは馴染みの科学者であった。キメラの研究に関しても、やつは熱を入れ込んでいたのでね』

 「そうなんですか……」


 昔の同僚といったところだろうか。キメラ……言われてみると、魔物のカリスもソマンヌもキシンも、全身を服や鎧で覆っていて、最初に会った時のゼロさんのような雰囲気は感じた。もしかすると、もしかするかもしれない。気には留めておこう。俺が考え事をしている内、アマラさんが手をひらひらさせつつミオさんに頼みごとを始めた。


 「ええと、君は……ミオ君だっけ?」

 「あ……はいっす」

 「悪いのだけど、霊界神様や、精霊様が複数人、誘拐されている事。バン大佐にも伝えてもらえないかな」

 「承知しましたっす」


 アマラさんの頼みを受けるとミオさんは席を立ち、力いっぱいに運転席の扉を開いた。


 「まっすぐ走らせやがれ!俺ェ!」


 開いた扉の向こうからグロウのストイックな叫びが聞こえ、それに気圧される様子を見せつつミオさんは戸口をくぐる。一方、ミオさんに報告を任せたアマラさんはというと、座席の背もたれに顔をつっぷして仮眠モードへ移行した。すぐさま、バンさんが運転席からやってくる。


 「アマラさん!他にも被害者がいるって本当ですか!でしたら……あっ!寝てる!」

 

 あ……バンさんが無茶を言い出す前に眠りに入って、あとは聞く耳をもたない作戦だ。この人、器用だなぁ……。


 「もう。ふわふわのところだけ持って行ったら、おねえちゃん困りますぅ」


 その後、キッチンを出てきたカリーナさんはバスケット籠のようなものを腕に下げて、俺たちのいる座席の近くへと落ち着いた。それにはサンドイッチに似た料理が詰まっており、パンっぽいものの中には色とりどりの具材が詰まっている。俺は片手に持っていた、アマラさんからもらったパンをじっと見つめた。


 「……」

 

 アマラさん、サンドイッチのパンしか食べずに寝たのか……自由だなぁ。


                             第82話の6へ続く


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