表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
270/583

第81話の1『おさわり』

 {前回までのあらすじ}

 俺は時命照也。恋愛アドベチャーゲームの主人公なのだが、なぜかバトル漫画みたいな世界に飛ばされた。霊獣のジャジャーンさんの頼みで精霊神殿へやってきたのだが、そこへ魔物の大群が押し寄せてきた。さらわれたリリーさんは取り戻したものの、リリーさんの入れられている鳥かごの開け方が解らず困っている……。


          ***


 神殿の入り口の方からだろう。ジャジャーンさんの叫び声みたいなものが聞こえてきた。リリーさんを解放してあげたい気持ちは山々なのだが、ひとまず鳥かごの開き方については後回しとして、どのような事態になっているのか確かめに行く。


 「どこが入り口だったっけ……」

 「こっちこっち!」


 中庭らしき場所からは様々な場所へと通路がのびているので、マップを見ても通路の繋がりが理解しにくい。ルルルの案内を受けて神殿から出ると、ウロコを傷だらけにしているジャジャーンさんを見つけた。そんなジャジャーンさんは神殿の入り口付近にて尻尾を振り回し、魔物の衆を階段からはらい落している。近づいたら危なそうだと判断し、俺たちは神殿の中から声をかける。


 「ジャジャーンさん!無事でしたか!」

 「こちらは問題ないわ!霊界神様や、精霊様の様子は?」

 「それが……俺たちが来るより早く、連れ去られてしまったみたいです。リリーさんだけは残っていたんですが、この鳥かごに入れられてしまって……」

 「ぐぐぐ……許さないッ!やつらに制裁を!」


 霊界神様や精霊様が連れて行かれたことを知り、ジャジャーンさんは逃げていった魔物たちを追いかけて森の中へと入っていった。空には金色の薄い膜が見え、まだ結界の効果は残っていると見られる。敵が弱り切った幹部クラスと一般兵だけであれば、結界から外へ出られなくなった魔物たちをジャジャーンさんが一掃してくれるかもしれない。


 「リリーさん。大丈夫ですか?」

 『……うう』


 神殿の中でグロウと戦っているキシンという魔物の所在は不明だが、ひとまず周囲に敵はいないと見て俺は鳥かごを開く作業を再開した。捕らわれているリリーさんへ呼びかけてみたものの、どうにも声に元気がない。両手で鳥かごの金網を引っ張ってみても、それなりに硬いのでビクともしない。


 「これ、手を入れたらどうなるんだろう……」


 リリーさんを引っ張り出せるほどの隙間ではないものの、ものは試しと考え俺は鳥かごの中を手で確かめてみることにした。歪んでいる金網の隙間へ恐る恐る手を入れてみると、スッと途中から手が消えて見えなくなった。でも、手の感触は残っているから、鳥かごに食いちぎられたわけではないらしい。


 「……あ、いててて!」


 そのまま腕を鳥かごへ押し込んでいき、手を奥へ奥へと入れていく。すると、電流が走ったように腕が痺れた。痺れや痛みは数秒で収まったが、また少しすると同じ痛みが腕を襲う。


 「……いってぇ!」

 「お兄ちゃん……どうしたのん?」

 「この中、かなりキツイみたいだぞ……定期的に体を痛めつけてくる」

 「……リリー」


 そんな痛みの中、俺の手が何かに触れた。なんだろうか。柔らかくてプニプニしている。リリーさんか?反応をみようと、俺は柔らかい何かを触り続けてみた。


 『そこ……やぁ……そこ』

 「……」


 鳥かごの中から嫌がる声が聞こえてくる。あ……これ、もしかして……触っちゃダメなところだったんじゃないか?そう気づき、俺は鳥かごから腕を引っ張り出した。


 「す……すみません」

 『はー……はー……いえ、いいんですけど』

 「……」


 ちょっと気まずい……それでも、念のために俺はリリーさんへ質問した。


 「俺……今、どこ触りました?」

 『……』

 「……」 

 『……ほっぺですぞ』


 これは部分的に……セーフか?


                              第81話の2へ続く


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ