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第80話の6『お掃除大作戦』

 俺は手に持っている用途不明の道具を逆さに持ち替え、棒の先についている布のパサパサでソマンスという魔物をはたき始めた。


 「魔物は消毒だー!」

 「ぐおおおおおぉぉぉぉぉ!」


 パンパンと力強く体をはたいてやると、ソマンスの体についていた金色が粉となって飛び散った。それに伴い、ソマンスは脱力したような、痛みに苦しむようなうめき声を漏らしている。すぐさま、他の魔物たちは俺を止めようとする。


 「貴様、ソマンス様に何をする!うおぉ!?」


 俺に武器を向けている他の魔物たちにも掃除道具を向け、それなりにあるリーチで掃除攻撃を仕掛ける。ソマンスの苦しむ様子を見て危険に勘付いたのか、他の魔物たちも体をはたかれるのを恐れて及び腰である。


 「近づくな!お前も、お前も、こいつと同じく掃除するぞ!」

 「ぐぬぬ!」

 「助けろォ!今すぐ助けてくれよォ!」


 『掃除するぞ』などと脅迫に聞こえない脅迫をしつつも、俺はソマンスを今なお掃除し続けており、すでにソマンスの体は金色が残り少ない。ソマンスは魔物の中でも階級が高いのか、他の魔物に自分を助けるよう命令している。ソマンスが完全に弱り切ったところを見計らって、俺はリリーさんが入っている鳥かごを奪取した。


 「人質は取り戻した!次は、お前らだぞ!うりゃああぁぁぁ!」

 「うわぁ!こっち来た!やめろ!」


 勢いよく掃除道具をブンブンと振り回すと、それに当たった敵も体の金色がはげていく。金色を失った魔物はソマンスと同じように苦しみだすからして、もう隊の統率はメチャクチャである。金色を失いつつある魔物は神殿から撤退を始め、まだ元気な者もソマンスを担ぎ出す作業に入っている。やった!リリーさんを取り返したぞ!


 「お兄ちゃん!」


 神殿から脱出していく魔物を見送っていると、神殿にバリアを張り終えたルルルがやってきた。俺が片手に謎の棒、もう片手に鳥かごを持っているのを見て、どういう訳かと驚いたように目を丸くしている。


 「お……お兄ちゃんが、魔物を追い払ったのん?」

 「俺が……というか、この棒がというか……」


 俺がしたことといえば、はたき掃除をしつつ立ち読み客を追い出す本屋の店員のソレである。まあ、大したことはしていない。そして、この棒はなんなのか。


 「この棒、勝手に使っちゃったけど……なんなんだろう」

 「それ、霊界神様が大事に持ってた、聖なる杖なのん……乱暴にしないでほしいのじゃ」


 そうだったのか……そうとは知らず、はたき棒として使ってしまった。バチが当たらなければとは思うが、結果として神殿から魔物を追い払えたので、神様も許してくれるであろうことを祈るばかりである。それはさておき、俺はリリーさんが入っている鳥かごを開きにかかる。

 

 「トビラっぽいものはないが……壊せば助け出せるかな?」

 『優しくしてほしいですぞ!もうリリー、あざが出来ておりますぞ!はー……はー……』


 聖なる杖で叩いてみようかと考えたが、内部への衝撃は俺が思う以上にあるらしい。はかなげな息づかいも聞こえてくるので、衰弱している中で無理はさせてはいけないと気持ちを改めた。他の手段を探そうにも、鳥かごの中には光しか入っておらず、リリーさんの姿はうかがい知れない。まず、どういった構造のものなのか知るため、鳥かごをルルルに見てもらっている。


 「……お兄ちゃん。これ」

 「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」


 突然、神殿の入り口の方からジャジャーンさんの声らしき咆哮が響いた。そうだった!まだジャジャーンさんの無事を確認していない!俺は鳥かごを持ち上げると、ルルルにもついてくるよう言いつつ神殿の入口へと走った。


 「行くぞ!ルルル!」

 「う……うん」


                              第81話へ続く


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