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第80話の5『他力本願』

 「壁からソマンス様と怪しいやつが出たぞー!」


 などと言いながら、周囲の魔物たちが一斉に俺の方へと走ってくる。そろいもそろって金色の体してからに、どう考えても怪しいのは奴らの方だと言わざるをえない。だが……そんな事よりも事態は深刻である。リリーさんを助け出す前に、この状況をなんとか打破しなければ。その策を練るべくして辺りの様子に目を向けていると、俺も含めて世界が動きを止めた。そして、一文字一文字、選択肢が表示されていく。


 『敵の集団と遭遇した。勇者は、どうする? 1.壁へと戻る 2.手持ちの道具で無双する 3.お掃除する 4.大声で助けを呼ぶ 5.ごめんなさいする』


 こんなにも、どうしようもなさそうな危機的場面においても、まだ生き残る手段は残されているらしいことに少しビビる。とはいえ、俺にも実行可能な選択肢は『助けを呼ぶ』か『ごめんなさいする』くらいに思えるが、謝ったところで助けてもらえる気がしないし、そもそも俺は悪くないから謝る必要は今のところないといえばない。とにかく、一つずつ順番に考えていこう。


 『1。壁へと戻る』はできるなら得策であるが、このソマンスと呼ばれた魔物の特性が解らない以上、壁へ戻ろうとしても失敗しそうな予感である。壁に入れるのは意識を集中している間だけとか、息を止めている間だけとかなのかもしれないが、力で叶わなそうな相手でもある故、俺が壁抜けの能力をコントロールできる可能性は極めて低い。


 じゃあ、『2.手持ちの道具で無双する』はどうだろう。俺が手に持っているのは、さっきの部屋で拾った長い棒である。棒の部分は金属っぽいが、俺の手元の方にだけ布のヒラヒラが大量についていて、どことなく神主さんがお祓いの儀式で振るやつに似ている。正直に言って、攻撃力は強くなさそうであり、それと俺の腕力を掛け算したとして、どうあがいても無双はできないだろう。


 『3.お掃除する』……これ、お掃除するってなんだよ。『4.大声で助けを呼ぶ』は字面だけなら効果的に見えるのだが……ジャジャーンさんは神殿へ入ってこられないし、精霊の方々は戦闘力が高くないだろう。グロウは来てくれるかも解らないが、この数分でキシンという敵を片付けられたかというと微妙なところだ。


 「……」


 今のところ、効果がありそうな選択肢は……普通にソマンスを引っ張って壁へと戻れるならば『1.壁へと戻る』。この手持ちの棒が予想以上に強かったら、『2.手持ちの道具で無双する』だろう。でも、あまり成功させられる自信はない……。

 

 それ以外だと『4.大声で助けを呼ぶ』と『5.ごめんなさいする』なのだろうが、これに関しては目立ったヒントが見当たらず、賭けの要素が非常に強い。ここは『4.大声で助けを呼ぶ』に望みを託そうか。そう他力本願になったところで、俺はソマンスという敵の服に不審な点があることに気づいた。


 「……?」


 ……なんだろう。この魔物だけ、体の金色が剥がれてるぞ。俺の周囲にいる他の魔物や、キシンと名乗った魔物も金色に体を光らせていたはず。きっと神殿へ来る前に泉の水を飲んで、体へ金色をつけてきたのだろうと思われるが……壁をすり抜けている内に体が擦れて色が剥がれたのか?


 『ああ……体が金色じゃなけりゃ、あんま力が出ねぇかもしれねぇな』


 神殿に入って間もなく、こんなことをグロウが言っていた。これは……もしかして、もしかするのだろうか。その用途で使えそうなものも……手元にあるにはある!ああ!これだ!徐々に動き出そうとしている世界の中で、俺は一つの答えを導き出した。


 『3.お掃除する!』


                                第80話の6へ続く


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