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第80話の4『作動』

 「追えー!殺せー!」

 「怪しいやつは八つ裂きだー!」


 以上の発言から察するに、敵に捕まったら俺は八つ裂きにされて殺される訳だが、魔物たちはアーマーが重いからか走る速さは大したことはなくて幸いである。ただ、その代わりに敵は体がデカいので全力で逃げないと体格差で捕まりかねない。着崩した学生服を正しながら走っている俺の横へ、すぅっとルルルが心配しつつも飛んできた。


 「ダメだったん?」

 「うん!俺はいいから、あっちを頼む!」

 「う……うん」


 そう俺が頼みを告げると、ルルルは壁の中へと消えていった。魔物たちをまいてしまわないように、でも追いつかれないように気をつけながら、俺は狭い通路を抜けて別の部屋へと向かう。


 「……あっ」

 「……あ?」


 階段を上がった先にて、金色のキョンシーが壁に手をついて休憩しているのを見つけた。いた!ただ、普通に向かっていったら勝ち目はないからして、近くにあった謎の棒をを拾い上げて殴りにかかる。


 「リリーさんを返せ!このぉー!」

 「おおおあああぁぁぁ!」


 キャンシーは今度は壁の中へと入り込まず、いさぎよく絶叫しながら通路を逃走し始めた。あれ?どうしたんだろう。下の階で会った時とのリアクションの違いに戸惑いつつも、俺は臆する様子を見せたら負けとばかり敵を追いかける。


 「このおおおぉぉぉ!うあああぁぁぁ!」

 

 この距離なら届く!俺は拾った何かの棒で、敵が持っている鳥かごを殴りつける。すると、衝撃で歪んだ鳥かごの隙間から、ぼやっと女の子の声が聞こえてきた。


 『誰かぁ!助けてくださいですぞぉ!』

 「リリーさんですかッ!?」


 あの中にリリーさんがつかまっている!それが解った瞬間にも、大きな振動が神殿を襲った。爆音にひるんでしまい、俺は思わず目を閉じる。その音が遠のくと急いで目を開き、部屋の中を見渡す。室内には虹色のオーラがひらめき、光のチリのようなものも漂っている。きっと、ルルルが神殿の結界装置を作動させたのだと考えられる。


 「……あ、待て!」

 

 キョンシーの敵が息を大きく吸い、体を壁の中へと押し込み始める。しまった!逃げられる!そう思ったと同時に、俺はキョンシーの足を慌てて掴みにかかった。だが、基本的に敵の方が力は強いのは間違いない訳で、そのまま俺はキョンシーと一緒に壁面へと引きずり込まれた!


 壁の中では呼吸ができない。真っ暗な中、敵の足をつかんでいる感覚だけが残っている。振り落とされそうになるが、ここで手を離してしまったら最後、壁を作っている石材の中へと置き去りにされるかもしれない。とにかく、敵から離れないよう全力でしがみつく。その内、視界の中に光が差した。


 「ふあぁ!」


 壁を抜けた。すぐに肺は空気を取り込む。壁を抜けるのには敵も体力を使うようで、やつも俺の傍で息を整えている。しかし、どこへ出た?俺は顔を上げて、周囲の様子をうかがった。


 「……」


 そこは神殿の入り口近くにあった庭のような場所である。そして、神殿へ侵入してきたと思われる数十人もの魔物たちが、壁から登場した俺とキョンシーを見つめていた。率直に言おう。ヤバい……。


                              第80話の5へ続く

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