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第79話の6『原因』

 「それで、霊界神様と他の精霊様は、どこへ行ったんですか?」

 「あなた……誰ですぞ?」


 九死に一生を得た魔法少女を宝箱の上に安置し、俺は現在の状況についてリリーさんに尋ねる。したらば、リリーさんは怯えた仕草で俺から離れつつ、今さらながら当たり前の疑問を俺に返した。確かに、自己紹介がまだだったな。


 「俺はテルヤです。魔王を倒すため、魔王四天王を探して旅をしています」

 「そ……では、強い人なのですかっ!」

 「う……」


 強いといえばウソになる訳で、かといって弱いといえば『お前、なんなの?』感が強まるばかりである。すると、グロウが事実のような個人の感想を述べ始める。


 「こいつは強いぜ。四天王をもう2人も撃破し、それどころか俺にさえ勝った男だ」

 「おお!」

 「戦っているのかすら解らない奇怪な動きで相手を翻弄し、迂闊には手を出してこない神経質な男だぜ。口からは突飛に黒い衝撃波を放つ場合がある」

 「逆に怖くなってきましたぞ……」


 自然と四天王よりも自分の方が強い体で語られているものの、あながち言っている事は間違ってはいない……ゆえに、リリーさんが更に委縮してしまいかねない為、この辺りでグロウの話はとめておいた。なんにせよ、リリーさんが空の宝箱の肥しとなっていたところから察するに、精霊神殿で何か事件が起きた可能性は高い。そちらについて詳しく聞いてみる。


 「力になれるかもしれませんので、詳しく話を聞かせてもらえますか?」

 「う……うん。ちょっと前、ここに魔物たちが攻めてきたのですぞ。リリーは霊界神様に言われて隠れてたけど、騒ぎが終わったら誰もいなくなってて……」

 「……ッ!?リリー!それじゃ、みんなは魔王軍に掴まったの?」

 「う……全部、ルールルルが悪いんですぞ!ルールルルがいたら、みんなも霊界神様も本当の力が出せたのに……う……うあああああああぁぁぁぁぁ!」


 抱き着き攻撃を仕掛けようとするリリーさんとルルルの間に入りつつ、俺は現状と情報の整理を始めた。ルルルがいなかったから力を出せなくて、みんなは連れ去られてしまったという。そして、精霊が足りないことに気づいた魔王軍が、リリーさんを探して神殿の近くを捜索しているのだろう。あのカリスと名乗った忍者は、リリーさんとルルルを勘違いしていたのだと思われる。


 「……あたちのせい……なんで?あたち、なんにもできないのに」


 愕然としているルルルの表情を見るに、なぜ自分がいなかったから魔物の侵攻を止められなかったかは解らないらしい。まあ、それが解っていれば家出したりはしないのだろうが、俺は順を追ってリリーさんとルルルの言い分を聞いてみることにした。


 「リリーさん。どうして、ルルルがいないと、みんなは力を出せないんですか?」

 「う……ルールルルは特別だから。霊界神様、そういっておりましたぞ」

 

 う~ん。リリーさんもルルルの力については、詳細を知らないようだな。逆にルルルは、なぜ家出したのだろうか。そちらについて問いを投げかける。


 「なんで家出したの?」

 「……あたち、他の子みたいに、自然の力を管理できなかったのじゃ。なんにも役に立たなかったんよ」

 「それで怒られたのか?」

 「むぅ……みんな、『ルールルルはいるだけでいいのよ』とか『特別なのよ』とかいうから、辛くなってしまったのじゃ」

 

 ……みんな、本当のことを言ってはいたのだろうが、確かにイジメか慰めにも聞こえなくはない……日本語って難しいの。


                              第80話へ続く


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