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第78話の7『なんとかなった』

 「おぉーい!何してくれてんだ!コラァ!」


 俺たちがジャジャーンさんたちに殺されずに済んだところで、川下の方からカラスの姿になったグロウが飛んできた。当たり前ではあるのだが、いきなり襲ってきたジャジャーンさんとサカナカナさんに対してグロウは激しくキレている。


 「てめぇ、いきなり襲い掛かってきやがって!串に刺して焼くぞ!」

 「黙れ鳥。我は霊獣ジャジャーンぞ」

 「知るか!腹に入れば同じだぜ!」

 「グロウ。無事だったんだな」

 「あぁ!俺が、あれしきで死ぬかっての」


 ジャジャーンさんとケンカを始めたグロウに手を振り、俺たちがいる場所のそばに降り立ってもらった。久々にカラスの姿を間近で見たが、人間の姿に比べて何倍もデカくてモサモサしている。それはともかく、わざわざ来てもらったので、流された魔導力車の様子などを聞かせてもらう。


 「みんな、流されてったけど、大丈夫なのか?」

 「ん?いや、この先が大きな滝になっててよぉ。流されるまま落ちていったわけよ」

 「ええ?滝?」


 てっきり流れが緩くなっていくだけかと思っていたが、まさか大きな滝があるとは……すると、窓力車も無事ではないだろう。心配になり、俺は話の続きを促した。


 「それで、滝から落ちて、みんなは?」

 「いや、それはなんとかなったんだぜ」

 「なんとかなったんだ?」

 「なんとかなっちゃったぜ」


 どこをどうしてなんとかなったのかは解らないが……それなら良かった。


 「でよぉ。滝から落ちた先は毒の沼みたいになっててよ。もう目も開けられねぇんじゃねぇかな。あそこにいたら危険だぜ」

 「そうなのか?すぐ助けに……」

 「いや、それもなんとかなったみたいなんだぜ」

 「なったんだ……」


 主人公である俺のいないところで大冒険が繰り広げられているのだが、あの人たちの対応力の高さには脱帽である。ただ、カルマさんという予想できないことをする人が俺たちの方にいるので、その点では魔導力車に乗っている人たちの方がミスなく行動できる気もしないでもない。


 「すると今、みんなは?」

 「毒の沼を超えた先がイバラ地帯になっててよぉ。それもなんとかなったんだが、車のタイヤがパンクしたとかで修理してるらしい。かなり時間がかかるってよ」

 「パンクしそうなものなんてついてたか?」

 「知らん。ずっと見てたけど、そんな感じだったぜ」


 確か車にタイヤっぽいものはついてなかった気がするんだが……いや、待てよ。

 

 「あの……ずっと見てただけ?」

 「ああ」

 「助けてあげてもよいのでは……」

 「なんとなりそうだったし。俺、お前にしか興味ねぇし」

 「ですか」


 聞いていた感じ、グロウは早急に車から脱出した旨が受けとれた。まあ、そもそも俺たちに協力するとは言ってない人なので、こうして連絡に来てくれただけでも感謝した方がいいのだろう。あと、俺以外にも興味を向けていただきたい所存。


 「でよぉ。下にいるやつらからの伝言なんだが……どちらにせよ、目的地へ向かうには、ここまで戻ってこないといけないんだとさ。修理が終わったら迎えに行くから、ここで待っとけって言ってたぜ」

 「そうなのか……」

 「勇者を名乗る者よ。よろしいかね?」

 「……どうしました?」


 俺とグロウの会話を聞き終わると、ジャジャーンさんが頭を下げながら話を切り出した。


 「……我々の頼みを聞いてはくれないか?先程の暴挙に関して、謝罪はする。悪かった」

 「えっと、俺にできることならやりますけど」

 「……よかった。では、この近くにある精霊神殿を我々に代わり訪問してはもらえないだろうか?嫌な予感がしている」

 「……?」

 「サカナカナたち、入れない。精霊神殿」


 不思議な力で阻まれているからか、巨大な身体のせいで入れないのかは解らないが、サカナカナさんたちは精霊神殿には入れないらしい。だから、代わりに俺が中を見てくるよう言われたのだが……まず先に、俺はルルルへ質問を投げかけた。


 「ここに戻ってきたら、みんなは目的地へ向かうだろうし、今すぐ神殿へ向かえば時間はとれそうだけど……どうする?」

 「……あたち」

 「……」

 「あたちも行く」

 「僕を……僕を置いていかないでくださぁい!」

 

 勝手に話を進めていたところ、カルマさんに怒られてしまった……。


 「……じゃあ、ここにはグロウに残ってもらって、一緒に行きます?」

 「えっ?暗い森の中を……僕が?」

 「グロウと一緒に残ってもらってもいいですけど……」

 「えっ……この怖い人と?」


 みんなが来た時の為にカルマさんを置いていくつもりだったのだが、ここに残されるのもグロウと一緒にいるのも不安らしい。かといって、一緒に来てもらうのも嫌そうなので、どうしたものか。そう悩んでいると、サカナカナさんが腹ヒレを上げながら提案した。


 「サカナカナ。車、下から持ってくる。だから、オマエは一緒に来る」

 「じゃあ、ジャジャーンが勇者を精霊神殿まで案内する」

 「なるほど。では、カルマさんはサカナカナさんと一緒に魔導力車まで行ってもらっていいですか?」

 「……」


 すっごい嫌そうな顔ではあったが、カルマさんにはサカナカナさんと一緒に川を下ってもらった。その別れ際の彼のセリフが、これである……。


 「勇者さん。僕を忘れないでくださいね……」


                                 第79話へ続く


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