表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
254/583

第78話の4『迂回』

 魔導力車の大きな車体は森をぬうようにして器用に進み、次第に道は木々の間が開けた場所へと通じた。それなりに人通りのある道なのか、先程までに比べると左折右折が少なく、整備されていないながらも通行しやすいようにはできている。降り続いていた雨も弱まってきており、車に響いていたカンカンという雨の当たる音も今は聞こえてこない。


 「よし。どこから敵が来ても、すぐに発見できるよう、俺達で監視体制をしこうと思います」

 「勇者。やる気だな。私は何をすればいい?」

 「分散して席に座って、左右と後方の窓から外をながめます。ゼロさん、そちらを見ていてもらえますか?」

 「なるほど。理解した」


 車の後ろにある窓のフチにはキメラのツーさんを置き、俺と仙人で右側の窓を監視。ゼロさんには左側の窓から外を見ていてもらうこととした。ルルルにはキメラのツーさんの相手をしてもらうとして、これで何か仕事をしている感じを出しつつ目的地への到着を待とうと思う。


 「おわっと……」


 俺たちが監視を始めて間もなく、車が前触れもなくブレーキをかけた為、俺は前の席の背もたれに体をぶつけた。かといって窓の外に敵の姿はなく、一面に広がる厚い曇り空と、青い山とアンバランスに立っている木々くらいしか見当たらない。運転席から戻ってきたバンさんが、そのままま出入口のドアを開いて車から出ていく。それを追いかけ、ミオさんも車から顔を出した。


 「あの、どうしたんすか?」

 「ああ。道が途絶えた。あれを見てくれ」


 俺もミオさんと一緒に車から乗りだし、目の前に広がっている大きな運河を見つめる。川の途中までは木造の橋がかかっているのだが、それが真ん中から派手に叩き折れていて、さすがに魔導力車でも跳び越せなさそうな幅の損壊であった。雨が降って川が氾濫し、橋が壊れてしまったのだろうか。そんな予想を俺がしていると、運転席の窓よりアマラさんが問いかけを投げる。


 「バン大佐。あれ、どう思うかな?」

 「……ここを離れましょう。勇者さん達も、車に戻ってください」


 2人の会話に不穏なものを感じ、俺はミオさん達と一緒に車の中へと戻った。魔導力車はUターンをした後、川から遠ざかるようにして移動を開始する。俺は霞みゆく川と壊れた橋を窓から見ていたのだが、なぜか車は進むにつれて坂を上るように斜めになっていき、すぐに角度にして70度ほどまで傾きを強めた。


 「……?」


 俺が窓から前方を確認する。森の地面が大きく盛り上がっていて、地震がおきたように揺れながら動いている。そんな地面の膨らみが、車を強引に押し上げる。そして、その地面の中からは龍と見間違えるほど大きいヘビが飛び出し、その勢いで車は一気に川の方へと押し飛ばされた。


 「なんだ!?」

 「お兄ちゃん!後ろ!」

 「……?」


 ルルルの声を受け、弾き飛ばされた車の後ろの窓を見る。今度は川から巨大な魚が顔を出し、車を飲み込もうと口を開けている!しまった!敵か!このままじゃ飲み込まれる! 


                               第78話の5へ続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ