表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
247/583

第77話の4『発進』

 「姉さん。お気をつけて」

 「あら。うふふ」


 魔道力車の窓から下を見ると、カリーナさんと弟のカラードさんが別れの挨拶をしていた。カラードさんは普段着らしいシャツと皮ズボン姿なのだが、あちらこちらに包帯やガーゼを巻いていてケガの痕跡が見え隠れしている。そして、彼の後ろにはカラードさん見たさのヤジウマの方々が凄い。


 「お姉ちゃんが、カラード君の分まで頑張るからね。いい子で寝てるのよ」

 「やめてください……はずかしい」


 カリーナさんに頭をなでられて、カラードさんが恥ずかしそうに照れている。やっぱり姉弟で話してると雰囲気が違うな……と眺めていたら、その横で荷物整理をしているグロウとカラードさんの目があったようで、しばしの沈黙の末にカラードさんが対応を始める。


 「先日は、失礼いたしました」

 「……?」 

 「シオンです」

 「……ああ。おめぇか。気にすんな。俺が強すぎただけだぜ」

 「……ですか」


 微妙に噛み合ってるのか解らない会話ながら、自覚の有無は解らないがグロウの煽りスキルが意外と高くて、カラードさんのファンに夜道で刺されないかと俺は不安である。ちょっと悔しそうなカラードさんをなだめた後、カリーナさんも魔道力車へと乗り込んだ。


 「バン大佐。全員そろったかな?出していい?」

 「あぁ、うちのところはそろったな。勇者さん、よろしいですか?」

 「こちらも……問題ありません」


 運転席にいるアマラさんの呼びかけを介して、バンさんが俺に確認をうながす。車内にいるのはゼロさんとルルルと仙人、それとグロウも中へと入ってきた。ルルルの腕にはキメラのツーさんもついているな。ヤチャがセントリアルにて待機となった為、今回は以上で全員そろっている事となる。


 セントリアルとレジスタの面々はアマラさん、カリーナさん、バンさん、ミオさんだから……こちらの陣営の方が人数は多いんだな。でも、魔道力車が予想よりも大きい乗り物だったから、ぎゅうぎゅう詰めで移動しなくていいのは助かった。


 「確認よし。出してください」

 「ラジャー。出発するね」


 バンさんの合図を受け、アマラさんが車を発進させる。エンジンの音などもせず、まるで浮かんでいるかのように車は移動を始めた。車の背後に遠のく街を見ていたバンさんは窓を閉めると、作戦を共にするにあたって改めてミオさんに声をかけた。


 「ミオ隊員。任務参加、助かった。よろしく頼む」

 「あ……はいっす」

 「お姉ちゃんとバンさんがついているわ。絶対に守ってあげるからね」

 

 防衛隊チームの安心感が非常に強い中、こっちはグロウ以外の全員が辛気くさい顔をしていて悩む。俺も励ましの言葉など送った方がいいだろうか……と考えていたところ、空耳かと思うくらいの小さな声が車の後方から聞こえてきた。


 「……ぁ」

 「……?」


 何の声だろう。車の後ろ側についている窓をのぞいてみる。すると、小さくて見えないくらい遠く、何かが追いかけてきているのを見つけた。


 「お兄ちゃん。なにがあったのじゃ?」

 「え……いや、あれ……なんだろう」


 ルルルと一緒に目を細めている内、再びか弱い呼びかけが届いた。それにともなって、魔道力車を追跡してくる影も大きくなっていく。


 「……だ」

 「……?」

 「……くだ」

 「……?」

 「……僕だ!」


 カルマさんだ……このままでは追いつかれる!


                                 第77話の5へ続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ