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第77話の2『改めて』

 「ところで、ミオさん。ルルルとゼロさん、どこかで見ませんでしたか?」

 「あ、集合場所は引き車乗り場って伝えたので、きっと下で待っててくれてると思うっす」


 ここに作戦の参加者が全員が集まる訳じゃなくて、セントリアルの入り口付近で集合してから出発する予定なんだな。とすれば、カリーナさんの仕事が終わった時点で一緒に行けば問題ないので、それまでは焦らずに朝ご飯を堪能できる。どんぶり飯のような料理を3つトレーに乗せ、俺は仙人とヤチャが待っているテーブルへと向かう。


 (勇者よ。それは?)

 「カリーナ丼です」

 (料理の名前……)


 カリーナさんが発明した料理だからか、それすなわちカリーナ丼である。仙人は料理名に戸惑っているが、料理自体はご飯と野菜と魚らしきものが混ぜ合わせて盛ってあるシンプルなもので、朝からでも軽く頂けそうなヘルシー料理であった。ヤチャも自分でご飯を食べられる程度には回復しており、手伝ってあげなくても問題はなさそうである。


 「ところで……勇者さん。ヤチャさんって、今回は行けないんすか?」


 俺の隣に座ってコッコマンジなる料理を食べているミオさんが、ぎこちない動きでスプーンを持っているヤチャを見ながら俺に聞く。キメラのツーさんにレジスタが乗っ取られた時も、それなりにヤチャは派手な活躍してたからして、隊からも少し期待はされていたのかもしれない。


 「ええ。ヤチャは魔王を倒すまで、一緒に戦う仲間なので……今回は大事をとってお休みです」

 「テルヤァ……」

 「ヤチャ……ちゃんと食って寝て、早く回復してくれよな」


 こんな話をしていたら、無理してでもヤチャがついてこようとしてしまいかねないので、ちょっと話題を変えて他の作戦メンバーについてミオさんに尋ねる。


 「すると、この作戦。セントリアルからの参加者は……アマラさんとカリーナさんだけでいいんでしたっけ?」

 「道案内もしないとなので、レジスタからバンさんも来るっす。それに、あと一人……なぜか、私もなんすけど」

 「……ミオさん、部署が違うんじゃなかったでしたっけ?」

 「だって、レジスタ主導の作戦なんだから、そっちからも隊員を派遣してって言われて、他に適合者がいなかったっすから」

 「えっと……ミオさん。適合者ってなんですか?」

 「今回の任務は危険ってことで、戦闘経験の浅い隊員、ならびに魔力保有者は参加を却下されたっす。なんで消去法で私が来たっす」


 『危険な任務』……その重たい響きが、俺の心に残った。目的地には敵がいるかもしれないし、運が良ければ何もいないかもしれない……もはや、一寸先の想像もつかない任務へ臨む中、ミオさんの話を聞いていたら不安になってきた。さっきミオさんがヤチャに来て欲しそうだったのも、戦力的に頼れる人がいてほしかったからだろう。うん。俺も全くもって同感である。


 「なんだぁ?勇者、ビビってんのかよ?」

 

 縮んだ胃に俺が朝ご飯を入れていると、それを見たグロウが挑発するように笑いながら言ってきた。確かに……俺がビビっていてはヤチャも安心して眠れないだろう。いつもならば素直にお気持ちを表明するところ、今回は虚勢をはって反論する。


 「び……ビビッてないやい!」

 「ああ、そうだ。俺を負かしたお前が、これしきでビビるわけがねぇ。もっと食っとけ!腹が減っちゃあおしめぇよ!」

 「グロウ……そうだな」

 

 そうだ。みんなにセントリアルで負担をかけた分、今回は俺が頑張らないとダメなんだ。そう考えを改めたら、少し心持ち楽になった。腹をすかしてはいけないとばかり、俺もグロウと一緒におかわりを貰いに行く。食堂のカウンターにて、俺はカリーナさんにカリーナ丼をオーダーした。


 「カリーナさん。これと同じの、もう一つもらえますか?」

 「はぁい!ちょっと待っててね!」

 「俺にもくれよ!」

 「あなたは食べ過ぎです!だぁめ!」

 「ち……ちくしょおー!」


 食べ過ぎにつき、グロウはおかわりを止められた……。


                                  第77話の3へ続く


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