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第74話の1『酒』

 {前回までのあらすじ}

 俺は時命照也。恋愛アドベチャーゲームの主人公なのだが、なぜかバトル漫画みたいな世界に飛ばされていた。セントリアルの人たちとのやりとりも一段落し、協力体制とはいかないまでも話し合いができる程度にはなったようである。そして、さっきレジスタの街がセントリアルへ到着したところ。


          ***


 「おぉ、テルヤ君。元気しとった?」

 「お久しぶりです……」


 気さくな挨拶を交えて、博士が俺にハグしてくる。もうちょっと早く来てくれてれば、セントリアルとの交流もスムーズだったのではないかと思ったのだが……そんな博士に姫様が食って掛かっていった為、すぐに考えを改めた。


 「博士……どうして、どうしてレイナが生きているの?ワタクシ、それが知りたいの」

 「あ……お……な……なんの話かね?」

 「おとぼけになって?あちら、ゼロさんと名乗ってはいるが、ワタクシは理解した。あの顔はレイナでしょう?」


 レイナ……それは初めて聞く名前だったが、なんとなく誰なのか察しはついた。多分、キメラの実験についてはセントリアルに知らされていなくて、その技術でゼロさんは生まれたのだろう。そして、キメラのツーさんに襲われたあと、ゼロさんの頭のパーツとして交換されたのが……博士の娘さんの顔だ。となると……あれ?


 「あの……姫様。お聞きしたいことがあるんですが」

 「なにか?」

 「……博士の娘さんと姫様って、どんな関係なんですか?」

 「……きゃはは。お聞きになりたい?そう、ワタクシとレイナは」

 「ただの幼馴染だ……テルヤ君。気にせんでOKだよ」

 

 一方的に姫様が好きだっただけのようで、安心したような、そうでもないようなである。暴力沙汰を起こしそうな剣幕の姫様をバンさんとアマラさんが抑え込み、ひとまず会話になる雰囲気まで落ち着かせた。この場では一般の人々の目もあるとの事で、俺たちはレジスタへと移動することに決めた。


 「あ、勇者は空、飛べないんだっけ?」

 「まあ、肩書きが勇者なだけで普通の人なので……」

 「なら、俺と同じだな」


 空を飛べる人たちは自力でレジスタの下側にある穴へ向かったのだが、俺とバンさんとゼロさんは魔法を使えないからエレベーターを使わせてもらった。徐々に上がっていく高度に目まいをおぼえるが、俺より先に乗ったバンさんが声をかけ続けてくれたおかげで、カルマ隊員の乱暴な操作にも振り落とされずにレジスタへ辿り着けた……。


 レジスタの最下層にはゴミ捨て場みたいな場所があり、そこからハシゴで登った先に段々と街が形成されている。街の内部は前に見た時と変わっていない様子だから迷いはしなさそうだが、上層にある研究所まで移動するのは少し時間がかかる。どこで会議をするのか、博士に聞いてみた。


 「このまま研究所まで行くんでしたっけ?」

 「街の大衆食堂、行ったことある?」

 「いえ、まだです」

 「じゃ、そこ行こうか」


 という流れで、ゴミ捨て場から長いハシゴを登った先にある食堂へ入ったのだが……店の内装が、どう見ても居酒屋である。そこの長いテーブルの席へ、セントリアルの姫様やら武闘派衆のアマラさんやら、俺の仲間の人たちやら魔物のグロウやらが並んで座る奇妙な構図となった。ここ、居酒屋ですよね?


 「あの、博士……ここって居酒屋ですよね?」

 「食堂なんだよね」

 「それ、何を飲んでるんですか?」

 「レモンサワー」

 

 酒、飲まずにいられなかったか……。


                             第74話の2へ続く


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