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第71話の6『グロウ vs シオン』

 司会者さん……今はレフェリーの方と言った方が正しいかもしれない。その人の指示において、シオンさんとグロウは盤上の線が引いてある場所へと立った。2人の間の距離は7メートルくらいあって、やや間合いを取ったスタートとなるが……にも関わらず、合図を待たずにグロウは屈み腰ながら斬りつける構えをとっている。

 『それでは失礼して……レディー……ファイ!』

 「剣心……揺らぎ!」

 レフェリーさんが手を振り下ろした……その瞬間には、もうグロウの使う刀の3本がシオンさんに斬りかかったあとであった。しかし、振りぬかれた全ての刀の刃は空を切っている。なにが起こったのか説明したい気持ちは山々なのだけど、あまりに速すぎて何が起こったのか俺には解らない。バトルものに出てくる非戦闘員や一般人からの視点って、こんな感じなのだろうかと目に理解した。

 「な……なにぃ?」

 「一閃、なぞり返し!」

 で、俺がまばたきした次のシーンでは、シオンさんの細長い剣がグロウを斬り捨てていて、血は出ないまでもグロウは強く弾き飛ばされた。あいつ、斬られても大丈夫なのだろうか?

 「グロウ君といったかな。彼の手足は人間よりも硬いようだね」

 「あ……防御したんですか?あれ」

 隣で解説してくれたアマラさんいわく、グロウの手足は鳥の手足のように硬いらしい。それを使って咄嗟にガードしたらしいが、むしろ回避の動きすら見せずに全部の攻撃を避けているシオンさんの方が謎である。司会の人も紹介の際、『傷なしシオン』とか言っていた気もするし、そこは何か秘密があると見ていい。

 「壱・群青おろし!参番・黒桜!伍・緑奏線華!」

 ひるむ様子もなく近づいていくシオンさんへ目掛けて、グロウが縦横無尽の刀を差し向けた。やはり刀の刃は肌の表面にすら掠らず、まるで攻撃がすり抜けているみたいにも見える。さすがにセントリアルチーム側の能力は明かしてくれなさそうだが、ダメもとでアマラさんに聞いてみた。

 「シオンさん……どうやって避けてるんですかね」

 「まあ、回避できているとなれば、当たっていないのだろうね」

 「アマラさん」

 「……あ、ごめん。あんまり深くは言えない」

 途中で姫から注意が入ったので最後まで聞けなかったが、アマラさんの言い方からすると素早く回避しているだけの事みたいにうかがえる。その後も、まったくと言っていいほど攻撃が当たらず、シオンさんに間合いを詰められたグロウは相手の剣が降りぬかれる寸で、やむを得ないといった動作で空中へと飛び立った。カラスモードになって逃げるのアリなのか?

 『グロウ選手ー!逃げるんですかー!』

 「アホォ!少し体勢を立て直すだけだ……おあっ!」

 レフェリーさんから注意を受け、それにグロウが言い訳をし始めたところで、やつは盛大に何かにぶつかって落下した。空は青く澄み渡っているし、太陽しかステージの上空には見えないのだが……いや、待てよ。太陽、ぶつかった反動で揺れてない?

 「あ……アマラさん。太陽、揺れてないですか?」

 「え?ああ、あれは魔力を使った照明だからね。今は夜だし」

 「ええ?今、夜なんですか?」

 とすれば、ここに集まった観客の人たち……勇者歓迎祭からの流れで来てるのか!言われてみれば、深夜に放送される日本代表の試合を頑張って起きて見てる感のある、なんだか妙なハイテンションである。まあ、なんというか……お疲れ様です。


                                  第72話へ続く


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