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第69話の2『一から修行の精神』

 「ブレイドさん。今、どこへ向かってるんでしたっけ?」

 「姫様のお部屋でございます。ただいまの時間であれば、書類整理をされているかと。ワタクシ、姉様のことは一番、よく存じております故」

 乙女モードだったブレイドさんを落ち着かせ、俺は車いすを押してもらいつつ姫様の部屋へと向かっている。でも、目を閉じて城のマップを確認してみても、どこにも姫様の居場所は表示されていない。

 ところで、ブレイドさんが姫であるサーヤさんの妹だと解ったのはいいとして、なぜアマラさんの部下として隊の雑用的なことをやらされているのか。ちょっと気になったので、この移動時間を使って話を聞いてみる。

 「ブレイドさんって、姫様の妹なんですよね?すると、ブレイドさんも姫なんじゃないんですか?」

 「ワタクシは姫様と比較して、武術にも魔術にも秀でておりません故、一から修行の精神をもってアマラ隊長の業務遂行に助力させていただいております次第」

 つまり、アマラさんの弟子みたいなポジションなのかな?強くなれるならば、俺だって誰かの弟子として一度は修業したいものだが……どのような厳しい仕事を課せられるのだろうか。

 「修行ですか……アマラさんには、どんな仕事を頼まれているんですか?」

 「一日一万回、心を込めた捺印など」

 「その内、手の動きがインクの滲みる速さを超越しそうですね……」

 それだけ聞くとアマラさんのやりたくない仕事を押し付けられているようにも感じるが、体づくりや精神統一などの深い意味があるのかもしれない。ただ、ブレイドさんの弱そうな雰囲気からして、修行は身に入っていない気もしてしまう。いや……姫様は両親をなくされたと聞いたから、大切な妹をアマラさんの元へ置いておけば危険はないと……そういう理由で預けている可能性もありうるな。

 ブレイドさんの事情などを聞いている内、俺たちは姫様の部屋へと到着した。途中、隊員さんたちからはチラチラと見られていたが、一度も話しかけられることなく部屋まで辿り着いた。多分、あまりヤジウマっぽく俺に話しかけないよう、偉い人に言われているのだろうと思われる。

 「……」

 「……どうしました?」

 車いすから降りた俺を支えながら、ブレイドさんは微妙に緊張した面持ちで姫様の部屋のドアを見つめている。妹とはいえ、やっぱり姫様には少しの圧迫感を覚えるのだろうか。俺がブレイドさんに調子を尋ねてみると、相談とばかりにブレイドさんがつぶやいた。

 「いえ、こちらへ入室の際は、やや緊張いたしまして……」

 「姫様に会うのが緊張するんですか?」

 「……姫様の椅子にガイコツが装着されているのですが、実は……あちら、ワタクシと姉様の両親のものでして」

 それについては知っていたので、あまり驚く様子を見せずに俺は黙って頷いた。

 「……やはり、ちゃんと土葬に入れた方がよかったのではないかと気に病んでおりまして」

 「そこを気にしてるんですか……」

 「しかも、姉様……たまにガイコツに話しかけてらっしゃるので……」

 そんな話を聞いたら、なんだか俺も怖くなってきた……でも、ここで引く訳にはいかない。俺が扉の取っ手に手をかけた……その時、ふと後ろから声をかけられた。

 「む……何用か?」

 「わ……ああ、シュッパさんですか」

 姫様が後ろから来たのかと思い心臓が飛び出るかと思うくらい驚いたが、振り向いてみるとシュッパさんの姿があったので安心した。シュッパさんって割と体は大きい方だと思うのだが、近くに来られても全く気配を感じなかったな……。

 「俺、姫様に会いに来たんですが……」

 「姫は……城の外。この数日、昼前は歓迎祭の視察をしている」

 「そうなんですか……」

 どおりで城の中に居場所が表示されない訳だ。そして、姫様のことを一番に存じているはずの妹さん……心なしか不満げな顔である。


                               第69話の3へ続く


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