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第68話の5『発覚』

 つまりだ。今夜、勇者を歓迎する祭りが街では予定されていて、これにあわせて姫様は俺に今一度の質問を投げかけるのだ。祭りには偉い人たちや街の人たちも大勢いて、その現場を見守っているという展開。そんな中で俺が姫様の誘いを断るとなれば、どよめきや困惑の渦が巻き起こること間違いない。単刀直入に言おう……そういうモヤッとした場に出くわすのはツライ。

 「……トキメイ殿。体調が優れませんでしょうか?」

 「え?いえ……そうだ。やっぱり、祭りの準備の様子を見に行ってもいいですか?」

 「左様ですか!是非!みなさん、勇者様の力添えさえあれば、魔王との戦いも優勢と、非常に気合が入っております故!」

 なんとか打開策を得るべく祭りの準備を見学するとは言ってみたが、もしかすると祭りの盛り上がりを目の当たりとしたら逆効果になるかもしれない……とにかく、ただ寝ていても始まらない。行ってみよう。

 ブレイドさんが車いすを用意してくれたので、それに乗せてもらって俺は病室を出た。そのまま、俺は病室の近くにある別の部屋へと連れて行かれる。

 「トキメイ殿。勇者様が現れたとなれば騒動になる恐れがございます。こちらで変装をなされた方がよろしいかと」

 「そ……そうですよね」

 「あ……お着換えのサポートが必要とあれば、他の隊員を応援に呼びますが」

 「……?」

 さすがに、いつもの服で街を歩く訳にはいかないよな……などと考えていたところ、ブレイドさんの口から何やら遠慮がちな言葉が発せられた。着替えを手伝ってくれないという事は……そういうことなのか?

 「えっと……ブレイドさんには手伝ってもらえないんですか?」

 「え……まあ、ええ」

 「……ちょっと失礼なことを聞きますね」

 「はい」

 「ちょっと失礼なことを聞きますが……あの……」

 「……?」

 「ブレイドさんって……女性の方ですか?」

 「……え」

 ちょっと失礼なこととは言ったが、実は結構な失礼な事だったので、二回も前ふりをしてしまった。すると、ブレイドさんは驚いたような顔をして何歩か後ずさった。

 「……お気づきでなかったのですか?」

 「そうなんじゃないかとも思っていたんですが、失礼ながら……」

 という戸惑いの返答をブレイドさんにいただいたので、本人は普通に女の子らしいと思っていたらしい。いや、髪も女の人にしては短めだし、顔も中性的で微妙に判断がつかなかったし、大きな声では言えないが……体つきも女性らしさがなかったから、その確証が今まで得られなかったのだ。怒られるかとも思ったが、むしろ落ち込まれてしまい気の毒であった。

 「……」

 「いや……その、悪くないと思いますよ。俺は」

 「しかし、姫様の方が、美しいと思われます……よね?」

 「え?」

 突然、ブレイドさんの口から姫様の話が出てきた為、ちょっと心持ち焦ってしまう。まあ、姫様は美人だと思う。この世界に来て最初に会ってたのが姫様だったら、ヒロインだと思い込んだかも解らない。でも、どちらをほめた方が良いのか……珍しく恋愛アドベンチャーゲームっぽい問題が発生して悩んでしまう。どうしよう……ここは目の前の人を尊重した方がいいだろうか。

 「……俺は、ブレイドさんの方が可愛いと思いますよ」

 「どうせ、ワタクシは美人ではございません……」

 しまった……選択に気取られて、言葉選びを間違えた。俺が何か言い訳を考えている内にも、ブレイドさんはしゃがみ込んで不貞腐れてしまった。

 「幼少時代から比較されます。ワタクシは、姉様より優れた部分がございません」

 「……?」

 ……ん?姉様?

 「あの……ブレイドさん。つかぬことをお聞きしますが……あなたは姫様の……妹ですか?」

 「……」

 ブレイドさんは何も言わないまでも、涙目で顔をぷんと膨らませているからして、姫様の妹君で間違いないと考えられる。まさか、こんなところで意外なことまで発覚してしまい、今は俺の方が戸惑ってしまう。そにしても、この姉妹……う~ん。ビックリするほど似てないなぁ。


                                第68話の6へ続く


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