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第68話の4『用意』

 「これにて、ワタクシは失礼させていただきます。御用の際は、呼び鈴をご使用ください」

 「ありがとうございます」

 朝食のオーダーを済ませると、ブレイドさんはピシッと敬礼を見せて病室から出ていった。なお、昨晩の制服盗難に関する様々なことには全く触れず、かつ俺が着ていたものと同じものを着用していた為、そのあたりの許容に関してブレイドさんは非常に懐が深い。

 朝食には軽く食べられるものを頼んだのだが、大きなビスケットみたいなやつにシロップをつけたものをブレイドさんが持ってきてくれた。柔らかさはパン……でもないし、でもビスケットよりかは柔らかいし、そうだな……甘食の味が薄いバージョンって感じの物である。美味しいが、やや奥歯にくっつく。

 「こちらは、姫様がお一人で調理なされました。いかがでしょうか」

 「あ……はい。おいしいです」

 前回は完全に魔法調理器具と化していた姫様がだったが、作ろうと思えば普通に料理ができるようである。しかし、カリーナさんが作ったものと比べると美味しさに差があり、とにかく普通を極めている。

 そんなことを考えてすぐ、そういやゼロさんも料理は不得手であることを思い出した。恋愛アドベンチャーゲームでいうと、メインヒロインに高確率で料理できない人がいるのは定番だが、そういった意味では料理できない方がヒロイン力は高いかもしれないし……女子力は低いかもしれない。

 「トキメイ殿。昼食はいかがなされますか?」

 「……なんか俺、食べて寝てばっかりなんですが……いいんですかね」

 「怪我人ですので」

 「そうなんですけどね……」

 大した風邪じゃないのに学校を休んでしまった……そんな気持ちである。まぁ、俺の場合はケガ自体は大したものなのだけど、それにしても待遇が良いから遠慮したくなるのかもしれない。だって、姫様が料理を作ってくれるくらいだし……ん?

 「……もしや、昼食も姫様が?」

 「ええ。ええ。本日、姫様は全ての時間を勇者様に捧げると言っておりました故」

 そうなのか……男の子としては、それは非常に嬉しいことなんだろうけども、今夜の姫様の質問に対して、俺はにNOの答えをすでに用意しているのだ。あまり期待させるような言動は控えたい。という訳で、昼食に関してはいただかない方向で動いた。

 「すみません。あんまり食欲がなくて……昼食は結構です」

 「左様でございますか……しかし、勇者様歓迎祭につきましては、ご参加なされますでしょうか。近郊の政治家、領主、皆さまがお集まりになっております故」

 そうだよなぁ。歓迎祭なのに、主役の勇者がいないのは変である。でも、俺は歓迎される気はないのだから、参加しないのが当然ではあるのだけど……あっ。

 「ブ……ブレイドさん。もちろん、姫様は歓迎祭に出席されるんですよね?」

 「ええ。主催者であらせられます故」

 「……ああ!」

 なんで、姫様は朝に病室を訪れて以来、一度も俺に会いに来ないのか。どうして、夜に答えをもらうなどと先延ばしにしたのか。なんとなく解ってしまった。これは……してやられた。


                              第68話の5へ続く


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