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第67話の6『到着』

 バンさんと別れてからはアマラさんの案内で街を進んでいる為、特に道に迷う事もなく下り階段を見つけて難なく下層へと降りていく。そういやマップに名前の表示されるゼロさんが宿屋にいるだろうから、目を閉じて街のマップを確認してみれば場所が解るんじゃないか……と試みたのだが、あまりに街の通路がゴチャゴチャしていて迷いそうだったので、ここは黙ってアマラさんのあとをついて歩くことにした。その道中で広場を通った際、その中央に金属の大きな円盤が置いてあるのを見つけた。

 「あれはなんでしょうか」

 「地図だね。見ていくかい?」

 広場の中央にある円盤は真ん中から順番に段々を成して高くなっていて、その表面には文字の描かれたピースがギッシリとはめ込まれている。イチバン中央にある窪んだ場所が1階の街の建ち並びで、外側の最も高くなっている場所が最上階の様子と見られる。店や民家の場所が変わった場合、ピースを入れ替えて地図を作り替えるのだろう。

 「あっ……」

 「どうかしたのかな?」

 「あ……いえ、大丈夫です」

 不意にジワッとした痛みが足に走り、そのせいでよろけて転びそうになった。姫様がかけてくれた魔法が解けてきているのかは解らないが、腕にも同じような鈍痛が感じられる。なのだけど……それよりなにより、骨折した股間の上あたりが異様に痛くて恥ずかしい。このまま悪化してもいけないので、俺は宿へと急ぐことにした。

 その後、10分くらい歩いただろうか。下層へ行くにつれて人通りが多くなり、俺はアマラさんの後ろに隠れるかたちで街を進んでいく。そして、俺が目をつむって街のマップを確認しようとしたところで、ふとアマラさんは立ち止まって俺に声をかけた。

 「確か、この宿だったかな?」

 「あ、そうです。開いてますかね」

 見覚えのある宿屋へと辿り着き、俺は試しに宿のドアノブを回してみる。お客さんが出入りできるように開けてあるのか、深夜でも宿への出入はできると見られた。

 「では、私は宿の前で待機している」

 「すみません。ありがとうございます……」

 アマラさんは宿の前で待機していてくれるらしいので、俺は一人で宿のトビラを開いた。すると、俺が扉をくぐるより早く、中から誰かが顔を出した。

 「勇者か?」

 「お……ゼロさん」

 マップで女の子の居場所が探知できるとは言え、明確な居場所までは把握していなかったから玄関でゼロさんに出くわしてビックリしてしまう。久々に会ったゼロさんの顔は相変わらず無表情なのだが、どことなく気分が良さそうに見える。まさか、ずっとドアの近くで待っていたのだろうか?

 「ずっと、ここで待ってたんですか?」

 「待っていた」

 「テルヤ君。献身的な仲間がいるんだね」

 アマラさんにからかわれてもゼロさんは意に介していないのだが、むしろ俺の方が少し気恥ずかしくなってアマラさんへと頭を下げた。玄関で待っていてくれたのはゼロさんだけのようだけど、他の人は起きているのだろうか。俺はドアを閉めて薄暗い宿の中へと入りつつ、みんなのことをゼロさんに小声で尋ねた。

 「……みんなは寝てるんですか?」

 「セガールは飲みに出ている。ヤチャは勇者が来るから起きていると気張っていたのだが、夜になってすぐに限界を迎えて眠った」

 ヤチャ……大晦日に夜更かし失敗した小学生みたいだな。

 「仙人は普通に眠った」

 「歳ですからね……」

 「精霊様は勇者が来るのを理由にして、まだ今も起きている」

 悪い子だなぁ……。


                             第68話へ続く



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