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第67話の4『立ち話』

 「じゃ、俺は報告書の作成に戻るんで。あとは勇者の事、頼みます。アマラさん」

 「了解。任せたまえ」

 「あの……ワタクシ、制服の返却が済んでおりませんが……」

 「まだ勇者が着るから、これ着ておけよ……」

 本人は了承していないが制服は貸してもらえるらしく、バンさんは制服の上着を脱ぐとブレイドさんに被せていた。バンさんの制服は体格に合わせてサイズも大きく、上着だけでブレイドさんの腰下まで届く。なんか……服に着られている感じが可愛い。そんな中、ブレイドさんは俺の着ているものが自分の物なのか、胸元の刺繍を見ながら確認している。

 「やはり、ワタクシの所持物で間違いございません」

 「すみません。ブレイドさん。洗って制服は返します……」

 「いえ、お気遣いなく。しかしながら、私は肌身離さず制服を着用していたはずが、何故にトキメイ殿がお持ちで……」

 「……洗って返しますね」

 着用中のものをどうやって盗んだのか、それは俺がセガールさんに聞きたい……ともあれ、これで隊員さん達の目を気にして歩く必要はなくなった為、一つ肩の荷が下りた気持ちである。ブレイドさんとバンさんが帰っていくのを見送ると、俺は改めてアマラさんと一緒に宿屋を目指して歩き始めた。

 「うん。テルヤ君のお仲間が宿を変えていないならば、目的の場所は違いないだろうね」

 「きっと、変わってないと思います。でも、行き方だけ教えてもらえれば、俺が一人で行きますけど……」

 「街の治安は悪くないつもりだが、街には外部の者も多く滞在している。君が通り魔にでも刺されたら私は悲しいね」

 そう言われてしまうと、俺には自己防衛の術が一つもない訳で、ここは同行してもらった方が逆に迷惑にならない気がしないでもない。姫様の魔法が途中で切れた場合、救助してもらう必要もあるかもしれないと思い、ここはアマラさんに一緒に来てもらうことにした。

 「では、参ろうか」

 ショウさんが教えてくれた道とは別の細い道を選んで、アマラさんは俺の案内をしつつ前を歩き始めた。そうか。バンさんは久々に街へ戻ってきた人だったから道に疎かったけど、アマラさんは街の事情に詳しいから地図を見なくても目的地が解るんだな。

 思えば、さっきバンさんは自分のことを特捜課の隊長と言っていたが、どんな仕事をしている人なんだろうか。隊の機密っぽいことを聞くのはマズいんだろうなと思いつつも、俺は興味本位でアマラさんに尋ねてみた。

 「バンさんとはレジスタでも会ったんですけど、どんな仕事をしている人なんでしょうか」

 「ん?バン大佐は特捜課の隊長だからね。隊の情報収集部隊の中でも、特別な、捜索任務についている人だ。知りたいかな?」

 「出来る限りで……」

 「……例えば、魔王四天王の居場所……とか」

 「……え」

 特別な捜索任務って、そういうことなのか。その隊長が街へ戻ってきて報告書を作っているとなれば、なにかしら情報をつかんだとも考えられる。現在、俺は3人目の魔王四天王について、まったく情報を持っていない。これは……ちょっとでも欲しい。

 「もっと詳しく聞かせてもらえますか?」

 「そうだね……」

 アマラさんは進む足を止めて、何もない天井を見上げながら少し考え込んでいる。そして、指を一つ鳴らすと俺に告げた。

 「あれは、一つ前の季節の変わり目だったかな……」

 「……」

 「特捜課、皆で旅行に行ったんだって。いいよねぇ……」

 「あの……」

 特捜課の懇親事情についてじゃないです……。


                              第67話の5へ続く


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