第67話の2『遭遇』
「バンさん。どこがどこに繋がってるのか解りますか?」
「いや、全ては把握してないが、出入り口に札が貼ってあるから見ながら進めばいい」
言われてみると、ドアやらフタやらにはプレートが張ってあって、どこに繋がっているのか場所の名前が書いてあった。ちらほらいる食事中の方々の横を失礼ながら素通りし、レストランの入り口から外に出る。街は駅地下みたいに入り組んでいて、細めの通路を挟むようにして色々な店が並んでいる。これは確実に迷うと見て、すぐに俺はバンさんへ相談する。
「う~ん。みんながいる宿に行くには、どうしたらいいですかね……」
「俺も久々だからなぁ……あれから街の内部が変わってる可能性もある。街の地図を見に行くか」
との事なので、どこかに街の地図があるらしい。街は深夜ということもあって人通りは少ないが、店によっては営業しているところも少なくないと見える。なるべく目立たないようバンさんの後ろを歩きつつ、俺は街のストリートを見物してみた。
通路には窓などはなく、しかし魔法の玉っぽいものが光っているから明るさは保たれている。床は木でできていたり、金属で補強されていたりするものの、なるべく凹凸がないよう丁寧に作られていた。天井は割と高いが、通路の幅は人が5人くらい並んで歩くといっぱいいっぱいの広さである。
「こっちだ。はぐれるんじゃないぞ」
ストリートは途中で行き止まりとなっていて、したらバンさんは横にあった本屋さんへと入っていった。よく見ると、本屋さんの奥には別の通路があって、店の中を通じて他の場所へと行けるように作られているようである。
「……階段ですね。バンさん。どうしましょう」
本屋さんの奥には通路があったのだが、その先には上と下へ向かう階段が用意されていた。そういや、宿がある場所は何階だっただろうか……。
「勇者は宿を探しているんだっけ?」
「あ、はい。そうです」
「ここは通路の広さから見て、街の上の方だろう。街は5階層あって、宿は大方、街の一階部分に集まっている」
「なるほど。とにかく、下に行けばいいんですね」
そうか。街の人が使いそうな施設は街の上の方にあって、旅行客が使いそうなホテルや案内板やらは一階に集まっているんだな。宿の場所に大まかな目星がついたところで、俺たちは階段を降りて下の階へと移動した。
下に降りても壁や床の雰囲気は変わらず、でも少しだけ通路が広くなった。上の階よりも営業している店も増えていて、ところどころに防衛隊員の姿も見受けられる。
「あれ?バンじゃん。戻ってきてたの?」
正面から隊の制服を着た男の人がやってきて、親しげにバンさんに声をかけている。かかわらないよう俺はボウシを深く被って俯いていたのだが、それはそれで怪しかったせいか、すぐに見つかってしまった……。
「あれ?そっちの人、新入り?」
「……う……うす」
「細身だな。魔法使いか?」
「……う……うす」
「へぇ。いいなぁ」
「なあ、ショウ。久しぶりの街で迷ってんだ。地図は、どっちにある?」
さすがに顔を見られたらバレる……そんな間一髪のところで、うまくバンさんが興味を離してくれて助かった。
「あー。この先をまっすぐ行って、壁の右下にある小さなドアから向こうに行くといいぞ」
「おぉ、そうか。サンキュー」
バンさんがショウさんとハイタッチすると、そのままショウさんは俺には深く関わらずに去っていった。内心ドキドキで冷や汗がボウシが汚しそうではあったが、それでもなお俺は帽子をしっかりと被り直した。
「あっ、バン大佐ー!」
俺が安心していたところへ、今度は黒シャツを着たラフな格好の人が走ってくる。声からして……あれはブレイドさんか!盗んだ制服の持ち主が来た!これはよろしくない!
「勇者。あそこのドアに隠れてろ。俺が相手しておくから」
「すみません。ありがとうございます」
ブレイドさんの相手をバンさんに頼み、俺はバンさんが指さした方へと向かう。すると、目立たないくらいの小さなドアが店と店の間にあるのを見つけた。ドアには鍵がかかっておらず、何かの店に繋がっているプレートの案内もない。俺は急いでドアノブをひねり、ドアを開いたと同時に中へと駆け込んだ。
「……あれ?」
「……おや。テルヤ君?どうしたの?」
ドアの先は城の上層にある感じの部屋へと繋がっていて、そこには読書をしながらくつろいでいるアマラさんがいた……あれぇー?
第67話の3へ続く