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第66話の7『中間地点』

 城の内部を通っていた滑り台が途中から外部へ露出しており、俺は綺麗な夜空の下を滑走している。いや、綺麗な夜空などとは言ってみたが、悠長に星をながめている暇などなく、今も急な斜面を落ちるか滑るかしている。

 一応、滑り台に手すりらしきものはついているものの、滑り台には天井がなくて開きっぱなし。非常にスピードがついているせいもあり、コーナリングを間違えば遥か下にある街へとダイブするであろうことは想像に容易だ。とはいえ、手に力が入らないため、手すりに掴まって休む選択肢はない。

 「あああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 やばい!もう尻が半分、滑り台から落ちそうになっている!このままカーブが続けば、遠心力で吹き飛ばされる!それに加えて風も強い!もう体のコントロールがきかない!そんな絶望の最中、一瞬だけ意識が飛びそうになったところで、無事に滑り台は城の内部へと戻っていった。

 風当りがなくなり一安心ではあるが、依然として暗がりを猛スピードで進んでいる事実は変わらない。城の人たちに聞かれてはいけないと俺は悲鳴を殺しているが、その反面で既に顔色は蒼白である。とにかく、早く着いてくれ!その気持ちだけを心に秘めて、俺はリュージュの選手みたいな手足をのばした姿勢で体を滑らせている。

 「……?」

 それから何分かして、唐突に滑り台の斜面は終わった。心臓がバクバクいっている。もう下層にある街まで着いたのか?そんなことを思いながら暗闇の中で意識を安定させていると、バコンと音がして俺の右側の壁が引き開けられた。隊の制服を着た、やや年配の人が俺をのぞきこんでいる。

 「何?こんな時間に?」

 「え……いや……」

 しまった!隊の人に見つかった!急いで言い訳を考え始めた俺だったが、隊員さんは俺が何か言うより先に疑いを向けてくる。

 「こんな夜更けに滑り台……怪しいな」

 「えと……そう……ですか?」

 「……でもよ。それ以上にオマエ、勇気あるな」

 「……?」

 ……あれ?怒られるかと身構えたのだが、なぜか隊員さんに褒められてしまった。

 「……おらが作った滑り台、大多数は怖がって使わん。腰抜けばかり。おらぁ、隊員たちの先行きを憂うばかりよォ」

 この人が作ったのか……いや、そのおかげで俺は下へと向かえている訳だから、感謝した方がいいのかしら。

 「滑り台を使うくらいだら、みんな階段つかうってよぉ。おら、涙でるわい」

 「階段、あるんじゃないですか……」

 普通に階段があったことに言及しようとしたところ、後ろから何か大きなものが俺に追突してきた。それに伴い、俺は再び急斜面へと押し出され、スピードのその先へと戻っていく。

 「あっ……ごめん。中間地点にいたの?」

 「あ……ああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 バンさん……!


                                  第67話へ続く


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