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第66話の4『ヒーロー』

セガールさんが盗んだ……セガールさんから借りた隊の制服を抱えて、ひとまず近くのお手洗いまで移動する。幸い、目を閉じると城のマップが見られる程度には力が回復しており、どこを歩けば城の下層部へ歩いて行けるかは把握できた。

 お手洗いの個室で制服に着替えながらマップを確認していると、城のマップの中に一つ矢印が表示されているのを知った。サーヤと書かれているから、そこに姫様がいるものと見られる。

 一方、カリーナさんの居場所は表示がないから、今は城にいないか、もしくは攻略対象外の人であると考えられる……まあ、学園恋愛ものでいうと、恋愛できない先生的な立ち位置なのだろう。どう見ても男の人ではなかったから、そこは心配ない……はず。

 制服を着ることには成功したのだが、ひじやヒザを曲げると服が突っ張る感じがする。俺自身、そこまで体が大きい方ではないけれど、それより更に小柄な人の制服なんだろう。でも、歩くには不自由じゃないし、ボウシで顔も隠せるから変装としては成立しているはずである。

 「……」

 城の内部マップを見る事ができるといっても、恋愛対象になりそうな女の子以外は居場所が表示されないから、人と会わないよう慎重に進まないといけない。中でもアマラさんに気づかれるとミッション失敗は必至なので、できれば居眠りをしていてほしいところである。

 俺は元から着ていた学生服をカバンに入れ、ゆっくりと城の廊下を歩き始めた。通路自体は狭いものの、あちらこちらに道筋が解れているからして、正面から誰かが来れば避けることは容易い。ただ、問題は通路の薄暗さであり、遠くにある人影は見損なう恐れがある。

 「……お疲れ様でーす」

 「……うぃーす。お疲れーい」

 曲がり角から左をうかがうと、そちらには隊員の方が二人いて、あいさつからの立ち話を始めた。今の俺は隊の制服を着ているとはいえ、さすがに挨拶したらばれるな……そう考えていたら、なにやら隊員の方々は俺の話を始めた。

 「せんぱぁい、勇者様、見た?」

 「いいや、まだ会ってない」

 「僕、サイン欲しいんですよね。いつ行ったら、迷惑にならないですか?」

 「ばっか、お前。そういうのないように城に来てもらってんだろお?」

 「あぁ……そうすか。さーせん」

 俺のサインでよければいくらでも渡すのだけど、サインの練習なんてしてないから、ただの署名にしかならないのが難点である。にしても、この街の人にとって、武闘会の優勝者ってのはヒーローみたいなものなんだなと改めて実感した。

 「あ……でもよ。あまりに要望が多かったから、勇者の決勝の対戦相手がサイン会やってくれるってよ」

 「マジですか!?せんぱぁい!」

 「次に休みに行こうぜ!」

 「やったやった!」

 ええ?ヤチャ、サイン会させられることになってんの?などという謎のサプライズ情報を残し、隊員の2人は向こう側の通路へと消えていった……サイン会するの?


                                第66話の5へ続く


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