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第66話の1『脱走計画』

 《 前回までのおはなし 》

 俺の名前は時命照也。大会に出て骨折したが、念願だったメイド服が見られて嬉しかった。


   ***


 「あの……あなたは?」

 「はぁい!セントリアル武闘派衆 シオン・カリーナですよぉ!」

 何秒かの沈黙をはさんだ後、俺はメイド服のお姉さんに正体を尋ねてみた。シオンってことは、シオン・カラードさんのお姉さんなのだろうか。武闘派衆はアマラさんが名乗っていたものと同じである為、この人も強いには違いないんだろうが……腰にフライパンをぶら下げているだけで武器らしきものは見えない。いや、あれを武器として使う人も稀にいるかもしれないな。それはともかく、アマラさんはどうしたのだろうか。

 「カリーナさん……確か、用があったらアマラさんに伝えることになってたんじゃなかったでしたっけ?」

 「アマラさんは、ついさっき眠りました」

 アマラさん、もしかして魔王軍の後始末で大変だったのだろうか。それでいて俺の面倒まで見ることになっていたとなれば、仕事に仕事を重ねてしまい申し訳ない気がしてしまう。

 「あぁ。昨日の夜、魔王軍も来ましたしね……」

 「あっ、お隣のお部屋で居眠りしていたので、ちゃーんとベッドで寝るようにお姉ちゃん怒りました」

 「じゃあ、ずっとアマラさんは寝てたんですね……」

 なんか心配して損した気持ちである。しかし、なんだかカリーナさんは和やかな人である。お話をしているだけで、アウェーに身を置かれている緊張感が緩和された心地だ。こういうお姉さんって俺は好きなんだけど、恋愛アドベンチャーゲームだと攻略不可な人だったりするので悔やまれる。

 「あちしも少し早い昼食、いただいてよろしい?」

 「どうぞどうぞ」

 「俺、セガールさんと同じもので大丈夫です」

 この世界にいいて俺の知っている一般的な料理が、アッチャガオッチャガとユートピアライスくらいであるからして、ここはセガールさんにオーダーを任せてしまう。セガールさんは何か考える素振りを見せると、やはり聞きなれない料理名を口にした。

 「うんっ!コッコッコマンジカヅラは作れる?」

 「あぁ~。コッコッコとカヅラは切らしてまして、コッコマンジでしたらお出しいたしますが……」

 「じゃ、それでお願い!」

 「かしこまりまし!」

 どうも食べ物には聞こえない料理名と材料名が飛び交い、ゆるい会話の末にカリーナさんは部屋を出ていった。セガールさんが言うのであれば食べられるものではあるのだろうが、それにしても料理の内容は聞いておきたい。

 「コッコッコマンジカヅラってなんですか?」

 「作るのに時間がかかるわよ~。煮たり焼いたり、蒸したり揚げたりするんだから。そっちの方が、2人でお話しできるでしょ?」

 あぁ、カリーナさんがいる前だと俺が話しにくいだろうから、時間のかかる料理を頼んで席を外してもらったのか。好都合とばかりに、俺は話題を姫様の方へと戻した。

 「俺、ゼロさんのことが好きなので、姫様にはなびきませんが……なるべく穏便にことを進めたいと考えてます」

 「なんか、あれよね?修羅場になる男の思考パターン」

 「ですよね……なので、今夜あたりに置手紙をして、ここから脱走を図ります」

 「あら。そのまま国を出るのね?」

 「そうできたらいいんですが……」

 などと脱走の計画を立ててていると、街の外で花火のようなものが打ちあがった。窓から外を見てみると、なにやら城の外で街の人たちが忙しそうにしている。

 「セガールさん。あれ、何かの準備ですか?」

 「うぅ~ん……言わない方がいいかしら」

 「……あっ」

 その一言で、あれが勇者歓迎祭の準備であることを察した。そうと解ると、非常に脱走しづらい……。


                                第66話の2へ続く


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