第65話の6『恋愛指南』
「あと、ちょっと相談なんですが……」
「なになに?お兄さんに言ってみ?お姉さんでもいいわよぉ?」
両刀を持っている頼もしい人がいる訳で、姫様についても話題にしてみようかと思う。部屋に監視カメラ的なものがないか一回り眺めてから、俺は小声でセガールさんに相談を始める。
「……大会が終わってから、姫様がグイグイくるんですが……これ、どうしたらいいと思いますか?」
「なに?うれしいの?」
「うれしくないですよ……」
「したら、俺は仲間以外に興味ないですって言えばいいじゃない」
「俺、ここから動けないのに、もし姫様のご機嫌を損ねたらマズいじゃないですか……一緒に戦ってくれるって話も、オジャンになるかもですし……」
「マズくないッ!」
俺が踏ん切りつかないところをズバリと言われてしまい、そういう決断もできるのかなぁ……と納得はしてしまう。でも、俺の仲間内で戦える人はヤチャとゼロさんしかいない現状、このまま魔王と対決して無事に済む見込みはあるのだろうか?ここで戦力の頼りを増やしておくのが得策だとは思うし、その方がヤチャやゼロさんも安全になると思うのだが……。
「あのね。テルヤ君。もっと自信を持ちなさいよ?」
「……ん?」
「だって、なんか変な試合ばっかりだったけど、テルヤ君とキンニ君で大会はワンツーだった訳。少なくとも、救いようのないザコの集いではないじゃない?」
「ですかね……」
「なんなら、あの大会で剣を飛ばして戦ってた黒いやつも引き込めばいいじゃんよ。なんか仲、よさそうだったし」
「それは難しいんじゃないですかね……」
はたから見ると、俺とグロウって仲良さそうなんだろうか。一応、一緒に戦ったこともあるにはあるが……一方的にライバル視されている節もあるから解らない。まぁ、急に斬りかかってきそうだから、なるべく会いたくはない人ではある。それはそれとして、キンニ君って、ヤチャの事でいいんだよな?
「あのさぁ。テルヤ君さぁ」
「はい」
「あちしが何を言いたいかっていうとね。仲間の、あの子を悲しませないようにって事。あの子、テルヤ君のこと好きよ?わかってる?」
「ゼロさんですか?俺も好きなんですが……」
「ん。女を直視すると引き込まれるわよ。姫が積極的に来るなら、そっちを見ちゃダメ。解った?」
「はい」
そんな熱い恋愛指南に耳を傾けていると、ドアをノックする音が聞こえてきた。誰だろう……中に入ってもらうよう声をかけてみる。
「どうぞ」
「勇者様ぁ?ご朝食はいかがなされます?」
部屋に入ってきた人はメイド服を着たお姉さんで、表彰式の前に料理の用意をしてくれた人と同じ人だと思われる。彼女は屈託のない笑顔を見せていて、全身から元気があふれているのだが……なにやら、誰かに顔立ちが似ている気もする。それはともかく、メイド服が怖いくらい似合っていて、俺は輝いているように錯覚すらしている。
「……ほら、テルヤ君。直視しない」
「……すみません」
あまりにメイド服が見た過ぎて、セガールさんに怒られた……でも前回、メイド服を拝めなかったのは、セガールさんのせいなんだよなぁ。
第66話へ続く






