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第65話の5『迷惑』

 「テルヤ君がお金くれるっていうから来てあげたわよ?」

 「そんなことは言ってないですが……そういえば、誰が手紙を持って行ってくれたんですか?」

 「ブレイド君とかいう、あのちっこい子よ……あっ、そうそう。あなたねぇ」

 急に小声で喋り出したかと思うと、セガールさんは俺の寝ているベッドに座り込みながらお説教を始めた。

 「どうして、あの子のこと呼んであげないのよ……今朝から、すっごく無口だったわよ?かわいそうでしょ?」

 「あの子って……ゼロさんですか?ルルルですか?」

 「ちっちゃい子は元気よ。朝ご飯を2回も食べてたわ」

 「それはそれで大丈夫なんですか……?」

 ルルルが無口だったら確かに不安だが、ゼロさんは別に普段から口数が多いわけではないから別状はないと思われる。城へ来てほしくない理由も、それとなく手紙には書いてはいるし、そこは仲間の皆も理解してくれる……だろう。

 それはそれとて、ゼロさんがお見舞いに来られなくて残念がってくれているとすれば、むしろ俺としては嬉しい気持ちである。もう体は動くにも問題ないのだが、姫様の魔法の効果が切れたら動けないケガ人に戻ってしまう……今は仲間に面倒をかけさせない為にも、ここで安静にしておこう。

 「ちなみにぃー、賞金のことも聞いておいたわよ?あちしって偉い!」

 「ほんとですか?さすが、話が早い」

 「賞金はテルヤ君の手紙の文を証拠として見せたら、仲間のおじいちゃんに預けておくって言ってたわ。宿泊費、食堂での食事も滞在中は免除してくれるって」

 「そうですか……よかった。みんなの迷惑にならなくて」

 ひとまず、みんなを金銭的に不安にさせたまま待たせることにはならないと知り、俺は安心してベッドに横たわった。そんな俺の態度を不思議に思ったのか、セガールさんは更に詰め寄って俺にキッパリと言う。

 「もしや?もしやもしや、あだたって、鈍感でしょー?」

 「そうですかね……」

 「だって、あだたの仲間の人たち、みんなテルヤ君のことが大好きなの解るし。何か問題があっても、迷惑なんて思う訳ないじゃんけ」

 「その割には、ヤチャは俺をボコボコにしようとしてきましたが……」

 「彼ったら、試合が終わって目が覚めてから、あだたの話しかしないのよ?テルヤは強い。オレサマ、最強じゃなかった……って」

 そうか……ヤチャは俺と一緒に修行した仲間という事にはなってるけども、手合わせをした経験は多くなかったのかもしれない。パワーアップの塔で修行して強くなったから、俺と戦って自分自身、それと俺の力を再確認できたのが嬉しかったんだろう。そう考えれば、武道会の決勝戦は一見して仲間同士の無駄なケンカではあったが、避けることはできなかった戦闘だったのかもと考えられた。

 うん……そうだ。ここまで仲間と旅を続いてきて、ゼロさんとも二人で話をしたことはあるし、ヤチャとは一戦を交えた仲になった。ルルルは短い間だけど一緒に暮らしたもんな。仙人……入れ歯を取り戻してくれない限りは話が出来そうにないが、嫌われていることはなさそうな気がする。

 「セガールさん……なんか、ありがとうございます」

 知り合ったばかりの人に仲間のことまで教えてもらうとは思わなかったが、話をしてみたら非常に気持ちが楽になった。自然とお礼の言葉が口から出る。

 「いいわよ。だって、あちしも仲間でしょ?」

 「……ん?」

 「食費と宿泊費、タダにしてもらっちゃった!」

 なんというか……いやぁ、この人、抜け目ない……。



                               第65話の6へ続く

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