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第64話の4『呼び鈴』

 豆屋の主人が部屋から立ち去り、姫様のローズな香水の香りと、豆屋さんのおじさん臭さで良い感じに中和された。さて、部屋には大して資料的なものも置かれていないし、かといってインテリアに触って壊しても怖い思いをしそうであるから寝ている他ない。

 そういや、姫様は俺に興味津々の様子であったが、大会の優勝者だから特別扱いしているのだろうか。それとも、勇者だという確信を得たから仲間に引き込みたいのか。はたまた、俺の戦い方がバトル漫画っぽさを重んじていなかったから面白がっているのか。でも、それを直に質問しても笑われるか無視されるに違いないから聞くに聞けん……。

 明日の朝になれば、そんな姫様との面談が始まると考えたら、勝手に冷や汗が出てきた……あの威圧感で強く出られたら、下手をすると姫様の手下にでもさせられそうである。いや、それはそれで魔王討伐という目的は一緒だろうし、別にいいのだろうか。しかし、アマラさんの時みたく、うっかり相手のペースにハメられると面倒事が発生する可能性もある。相談できる仲間が身近にいない以上、俺が慎重にことを運ぶ必要はあるな。

 「……」

 いろいろと考え事をしている中、ふとテーブルの上に置いてある呼び鈴が目についた。豆屋の主人に夜勤は辛かろうて、あの人が呼び鈴に反応して夜中にも来てくれるとは考えにくい。一体、誰が夜に控えていてくれているのだろうか。

 「……」 

 まさか姫様は来ないよなぁ……などと不安になったが、夜も更ける前に挨拶くらいはしておいてもバチは当らないだろうと考えた。包帯だらけの手で呼び鈴を持ち、左右に揺らしてみる。あまり音が出ない。試しに縦に振ってみたところ、コーンと一度だけ気味のいい音がした。その後、20秒ほど経ってドアがノックされ、うすく扉を開いて誰かの片目が覗いた。

 「……私を呼んだかな?勇者君」

 「……ん?」

 「……私だよ。私」

 「……アマラさんですか?」

 「姫様は不在のようだね。して、君。早速、鐘を鳴らしてみたくなっちゃったのかい?」

 「はい。いい鐘ですね……」

 シュッパさんあたりだといいなあ……と期待していたのだが、不意に要注意人物を部屋へ召喚してしまった。でもまぁ、もう勇者であることは証明されている訳だし、もう危険な目にはあわされないだろう。そんな俺の安堵の様子をくみ取ってか、アマラさんは椅子に掛けると雑談ながら大会の話を持ち出した。

 「私は大会当日、外の警備に回されてしまってね。試合は少しだけ見られなかったんだ。あれ、どうやってやったんだい?決勝戦のバババババッってやつ」

 外の警備なのに少しだけ以外は見れているということは、それは勤務怠慢なのではないだろうか……いや、ここで指摘したら『高い所の警備だったし』とか、何かしら屁理屈を返される気がしたので、あえて触れないでおこう。バババババッというのは、ヤチャの連続攻撃を俺が避けてる雰囲気だったアレかな?

 「あれは、ヤチャが勝手に外してたんですよ」

 「すると、君の動きは、相手が攻撃を外すように仕向けた動きだったのかな?」

 「いえ……僕の動きは、純粋に避けようとしていた動きです」

 「……どういうことかな?」

 「……どういうことなんでしょうねぇ」

 説明しようにも、俺にも解らん……。


                             第64話の5へ続く


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