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第60話の6『誰?』

 風属性の使い手が勝ち上がったタイミングで、ヤチャが俺のいる控室に現れた。準々決勝を勝ち上がったヤチャは次、準決勝に出る訳だから……ここに来たということは、準決勝で俺とは当らないってことなのだろう。

 順調に勝ち上がっているヤチャに声をかけたかったのだが、ちょっと体の具合が悪いから手を上げて挨拶だけしておいた。ヤチャが決勝まで残ってくれた場合、俺は準決勝だけ頑張れば目的を達成できる。すると、少しだけ肩の重圧は軽くなった気がする。ヤチャ……ありがとう。

 「準決勝、ヤチャ選手、入場を願います!」

 「はい……」

 ヤチャが超人的に強いのは解っているけれど、彼はジ・ブーンとの戦いで負傷しているし、対戦相手もツクネさんを倒した強者である。ただ、今の俺には応援する事しかできない。階段を上がる胴着姿の背中を静かに見送った。

 試合の時が近いからとブレイドさんに呼ばれて控室に来たものの、40分くらいは余裕があったから少しは試合を見ておきたかったな。そうすれば、謎の風使いの対策もできたかもしれない。

 ……そろそろ、準決勝第一試合が始まっただろうか。そう考え始めた瞬間、バオンッと岩の砕けるような音が何度か鳴り、一瞬の沈黙をはさんだのちに大喝采が耳に届いた。どっちが勝ったんだろう。俺が階段の上をのぞきこんでいると、胴着が破けて股間だけ綺麗に隠れているヤチャの姿が見えた。どんな攻撃を受けても、絶対に股間部分だけは死守するヤチャの胴着……かなりの有能である。

 「テルヤァ……」

 「……さすが……うぇ。やったな。ヤチャ」

 無事に決勝まで勝ち抜いたヤチャへ、なんとか気分が悪くなりながらもお祝いの言葉を伝える。ヤチャは声を出さずに歯を見せて笑っている。ヤチャが決勝戦で戦う負担を減らすためにも、俺も死なない程度に努力したいと思う。

 「次、準決勝第二試合!トキメイ選手、入場を願います!」

 「よし……」

 階段を上がる手前で、受付の時と同じように紙切れを手渡される。ドキドキしながら見つめていると、数秒かけて紙は光り燃え尽きた。

 「検査終了。階段上にて待機を願います。名前を呼ばれ次第、ステージへ移動してください」

 防衛隊の制服を着た人に検査をしてもらい、無事に俺は階段を上がる権利を得た。会場へと続く階段は10段くらいあって通路は薄暗く、その出口からは戦闘の舞台となる四角い盤面がうかがえる。いや……その舞台は表面がバキバキに砕けており、あちこち穴でボコボコになっている。きっろヤチャが割ったんだろうが、優勝すれば弁償は避けられると期待しておきたい……。

 『準決勝第2試合!海サイドは、なんと英雄の証持ち!トキメイ選手!入場ー!』

 実況者の声がする……って事は俺、入場していいんだよな?どんな顔をして客前に出ればいいのか解らず、とりあえず俺は両手を上げてガッツポーズしながら光の中へと躍り出た。ステージへ上がる階段がないために上がるのも一苦労で、勢いをつけてよじ登るようにして高いステージへ参上する。

 さぁ……俺の相手は、どんな人なのだろうか。俺が実況の声を待っていると、それを待たずして黒い影がステージへと飛び乗った。

 「この時を待ちに待ったぜ!今日こそ、真の勝負をつけてやる!」

 『ちょ……君、名前を呼ぶ前に出てきちゃダメだよ!』

 「うるせぇ!宿敵を前にして黙ってられるか!覚悟しろ!勇者!」

 黒い袴のような服を着た人が、刀の切っ先を向けながら俺にライバルっぽい発言をしている。登場済みのキャラが主人公と再会したものの、影が薄くて主人公に忘れられている……というのは少年マンガの鉄板ネタではあるが、今回は本当に誰なのか解らない。こんな人、会った事あったっけ?

 「忘れたとは言わせないぜ!この俺を!」

 「……え?誰?」

 「てめぇ!俺を忘れたのか!俺だぞ!俺俺!俺だ俺!」

 ……誰だよ。


                                    第61話へ続く


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