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第60話の2『観戦』

 選手が客席まで投げ飛ばされてきた事にビックリしすぎて、咄嗟に朝ご飯が体から出そうになったが、なんとか喉元で思いとどまってくれて助かった。場外へホームラン&キャッチされたヤチャの対戦相手はフラつきながらも自分の足で立ち、ズボンで汗をふいてヤチャとガッチリ握手をしていた。

 「あはは。僕の負けだよ。ヤチャ君」

 「ふふふふふ……オレサマは最強……」

 なんか思った以上に相手選手がスポーツマンシップシップな感じを出していて、俺みたいなヒョロヒョロが出場していいものかと申し訳なくなってしまう。それはとにかく、これが二回戦ということは、一試合目はすでに終了していると見られる。ヤチャの試合が終了してすぐ、実況者は第三試合の選手を呼び出した。

 『三回戦!山はメンチ選手!海は&%$&#&!&#』

 客席の歓声が凄すぎて、ここからは選手の名前がよく聞き取れないな……まだ試合は一巡目だから俺の出番ではないだろうが、もっと舞台に近い場所へ行った方がいいかもしれない。えっと、山の場合は三角マークのついている登場口から出て、海は波っぽいマークのついている登場口から舞台に出ればいいようだな。

 「……?」

 誰かに肩を叩かれたのを感じて周りを見回すと、先に会場へ来ていたゼロさんが横にいる事に気づいた。周りの熱狂でゼロさんの声は聞こえないが、どこかに席を取ってくれているらしい。案内されるがままについていくがまま、ぐいぐいと舞台の近くまで進んでいく。

 なかなか良い席を取ってくれたんだな……などと期待していたら、まさかの最前列へ到着した。しかし、場所取りがてら先に座っていたルルルを膝に乗せて座る羽目となった。膝がぬくい……。

 「いや、一試合目は両方の選手とも硬くなる攻撃の連続だったから、無駄に長引いたんよ……」

 ルルルが一試合目を説明してくれたのだが、硬くなる攻撃とはなんなのかという謎だけが記憶に残った。さて、俺の対戦相手になりそうな選手をチェックしておきたいのだが、どこを見てもトーナメント表がない。シード枠があるとアマラさんが言っていた以上、トーナメント形式なのは間違いないと思うのだが……もしかして、わざと対戦相手を把握しにくいようにトーナメント表を設置してないのか?

 とりあえずヤチャが勝ちあがってくれれば、どちらかが棄権して順当に勝ち上がれる訳で、決勝までにヤチャと当たってくれると助かるな。そんなことを考えつつヤチャの方を見てみると、なにやら大勢の人に囲まれていた。サインなどせがまれているのだろうか。ちょっと嬉しそうな顔である。

 「三回戦!ツクネ選手の勝利いいいいぃぃぃぃ!」

 ツクネと呼ばれた選手は柄の長いハンマーを持っている。武器の使用については規約に書いていなかったし、なんなら銃でもロケットランチャーでも使用可能と思われる。なお、俺はロケランを撃てる自信すらないが、とりあえずペンダントを没収される心配はないと見て安心した。

 「……トキメイ殿。トキメイ殿」

 「……?」

 ぼそりと名前を呼ばれた気がして脇を見ると、ブレイドさんが通路の方から俺を呼んでいた。膝上のルルルを席に置いて、俺は観客の邪魔にならないよう速やかに移動する。

 「トキメイ殿。あなた様が、ご参加になされるとは思いもよらず、ワタクシも尊敬と驚愕の心境でございます」

 「……ん」

 「この度は試合の時が近く迫っております故、お迎えに参りました」

 「……んん」

 わざわざ控え室まで案内するために来てくれたらしい。実際のところ、司会者に名前を呼ばれても迷わず控室へ辿り着けるか解らなかった為、場所を確認に行こうか迷っていたところであった。

 「……では、参りましょう」

 「……んん」

 そう言いつつもブレイドさんは俺の顔を見て、なにかためらいがちに足を止めている。なんですか?

 「……」

 「……?」

 「僭越ながら、試合の辞退は事務所にて受理可能でございます故……あの、どちらへ?」

 「……おや?」

 いえ、確かに勝てる見込みは定かでないが、ここで辞退はしない故……。


                             第60話の3へ続く


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