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第60話の1『入場』

    《 前回までのおはなし 》

 俺の名前は時命照也。恋愛アドベンチャーゲームの主人公なのだが、気づけばバトル漫画風の世界に飛ばされていた。赤のオーブ、青のオーブを手に入れたのだが強盗に奪われ、それをなぜか武闘大会の優勝景品にされたからして、これから俺は武闘会へと足を運ぶところである……。

 

                     ***


 翌日の朝、俺は街の第二階層にある武闘会の受付を訪れた。規約を確認したところ、『英雄の証』を持つ者はシード枠なので、参加志願書を先に出しておけば自分の試合開始までに到着すればいいとの事。志願書は昨日の内に提出した。参加するヤチャや他の人たちには先に試合会場へ行ってもらったが、帰ってきていないってことは無事に参加できたと考えていいだろう。

 「では、魔力の検査を行います。右手を拝借」

 「……」

 係員の人が俺の右手に紙きれを握らせる。数秒後、紙切れは淡い光を散らして消えた。

 「検査終了。問題なし。呼び出しの音声があり次第、舞台の控え室へお越しください」

 「ん……」

 紙切れが消え去った時はやらかしたかと思ったが、どうやら魔力を感知して光るものだったらしい。無事に検査が終了したため、急いで部屋を出ようとする。

 「あ……トキメイ様」

 「……?」

 係員の人に呼び止められた。なんだろう。

 「……初戦前に再度、控室にて魔力検査を行います。ご協力を」

 マジか……厳重だな。すると、実際に出場するまでは引き続き気が抜けない……。

 ええと……確か、天空闘技場にはエレベーターで行くんだったっけ。今回はアマラさんがいないから、民間用エレベーターに乗っていけばいいんだろう。それを探しつつも、俺は街中をゆっくりと歩き出した。

 「おぉ!英雄の証のにーちゃん!見たぞ!表彰式!」

 突然、知らないおじさんが俺に絡んできた。こういう気さくなオジサンの存在は様々な作品でテンプレなので許容範囲内だし、声をかけられるだけならばいいのだが、その人が俺の背中をパシパシ叩いてくるからヤバい。大げさに笑顔を見せながらピースサインだけ送ると、すぐに俺はエレベーターの中へと逃げ込んだ。

 民間用エレベーターは50人ほどが乗れる広さで、部屋いっぱいに人が乗り込んだのちにシャッターのような扉が閉められた。アマラさんの時と違って複数人で起動させている為か、エレベーターの上昇スピードは遅いものの速度は安定しており、たまにゴトリと揺れが生じる程度の乗り心地である。体感、10分ほど経ってエレベーターの扉が開かれた。

 パッと白い光が視界を遮って、次第に光の中から闘技場の光景と客席の喝さいが浮かびあがってくる。俺がエレベーターの個室から外へ出る。すると、何かが闘技場の舞台から俺の方へと飛んできた。

 「ああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!」

 「……ん?うぁ!」

 なんだろう……そう思って見つめていたが、数秒してそれが人の影だと解った。投げ飛ばされた選手が悲鳴を上げながら、俺の方へとぶっ飛んでくる!どちらへ逃げればいいのかも決まらず、俺は顔を隠すかたちで防御の姿勢をとった。

 「ふんっ!」

 「……?」

 なにか聞き覚えのある声が聞こえた。誰かが俺の前にいるのを感じ、恐る恐る俺は視線を上げる。そこには飛ばされた選手をキャッチしているヤチャがいた。

 「ふふふふ……テルヤァ」

 「……ああ」

 ああ、ヤチャが助けてくれたんだな。安堵して俺が壁に背をつけると、表彰式の司会者と同じ声で実況が聞こえてきた。

 『二回戦!ジンギス選手、場外につき、ヤチャ選手の勝利いいぃぃぃ!』

 それを聞いて初めて、ヤチャが今の今まで戦闘中だったことを知った。つまり自分で相手選手を投げて、自分で跳躍して場外キャッチしたのか……ヤチャ、なんて恐ろしい子。



                                第60話の2へ続く



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