表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
143/583

第59話の4『尽力』

 「俺、今の今まで魔力ってのについて深く考えたことがなかったんですが……魔力ってなんですか?」

 セガールさんは魔女の風格こそあるが魔力がなさそうだし男なので、ここは魔力をもっていると思われる仙人の方に聞いてみた。

 (よく勘違いされるけど、わし、魔法とか使えないから……)

 「ええ?じゃあ、これなんなんですか?」

 (魔法ではない。念力だ……)

 精霊を召還したり、空を飛んだり、入れ歯を発射して飛行船を沈めたりしてた仙人が、魔法を使えないとか言い出した。じゃあ、魔法って何なんだよ。すぐに俺は女子部屋へと急ぎ、ルルルを戸口に呼びだした。ネグリジェ姿で枕を持ったまま、いかにも眠そうにルルルが出てくる。

 「なんじゃ?」

 「幼女先生……魔力ってなんですか?」

 「おぉ?哲学か?」

 「俺が聞きたいのは、そんなに難しい話ではないが……」

 「……ひとまず、勇者。中に入ろうか」

 立ち話もなんなので、ゼロさんのお言葉に甘えて部屋に入れてもらった。男部屋が異常にムサかったせいか、女子部屋は少し良い匂いがする気がする。これを俺は魔法と呼びたい。

 「俺……さっき、武闘会の参加資格を確認したんですが、微力ながら魔力がないと出ちゃダメって言うんですよ~」

 「ああ、お兄ちゃん。可哀そうに……魔力がないのね」

 「やっぱり俺って、魔力がないのか?」

 「……うん?じゃあ、ムキムキが話してた爆裂拳ってなんじゃ?爆発するん?」

 「……爆裂拳は俺も知らない俺の技だから」

 「なんじゃ。哲学か?」

 「……ジェットドライブ走法」

 ゼロさんが何かポツリと言ったが、それは俺の知らない俺の新技である。それらが魔法の産物かはさておき、魔力の定義ってなんなんだろう。

 「じゃあ、拳が爆発するのは魔力なのか?」

 「魔力というのは火や水といった自然の力じゃ。それを道具なしで操るのが魔法なんよ。応用すれば、大体の事はできて便利じゃ」

 「漠然とだが、それを俺が出来ない事だけは解った」

 なぜ、武闘会の参加資格に魔力の所持が入っているのか解らなかったが、きっと爆裂拳の噂が元凶なのだろう。絶対に興味ないであろうルルルにまでヤチャが語り回している上、オトナリの村でも見せかけだけは使ってるから、何か光を放つパンチという感じで噂で広まっているのだと思われる。

 仙人が魔法使いじゃないとなると、ヤチャですら参加資格はないかもしれないし……大会が始まる明日までになんとかしないと。ただ、魔法って潜在的なものなのか、鍛えれば出るものなのか。それすら解らん……。

 「やはり、私は出場資格がないようだ。すまない」

 「別にゼロさんは悪くないですし……」

 俺の持ってきた参加資格書を読みながら、ゼロさんは何も悪くないのに謝っている。とはいえ、今から俺が魔法をおぼえるのも無理だろうし……いや、無理かどうかは、やってみないと解らない!

 「幼女先生、お願いします!」

 「あぁ?」

 「弟子にしてください!」

 「え……や、やだぁ」

 「お願いします」

 「やだやだ!ついてこないで!」

 かつて幼女恐怖症だった俺が、今や嫌がる子どもを追いかけまわしている。これもレジスタでの修行の成果か。ならば、魔法だってなんとかなる……そう全力で思い込んでみる他ない。


                                 第59話の5へ続く




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ