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第59話の2『返却』

 「つかぬことをお聞きしますが、僕の持ち物が返ってきていないのですけれども……」

 「トキメイ殿のアンケートにはオーブと思しき物品について記載おりましたが、そちらに関しましては特別指定保管物となりました故、被害届による照合結果を適応いたしかねます」

 まあ、あれを誤って別の一般人に手渡されても困ってしまう訳で、厳重な対応には感謝なのだが……そのせいで普通には返却されないからして逆に困ってしまう。そんな事務的な対応を見せるブレイドさんであったが、一拍おいた後に少し緊張をやわらげつつ言う。

 「しかし、ワタクシは理解しております。2つのオーブは、あなたがたの手に必ず戻ると」

 「……え?」

 俺が勇者だってことをアマラさんが伝えたのだろうか。もう、そこまで知っているのならば返してくれてもいいと思うのだが……とか考えていたら、思わぬ答えが小声で返ってきた。

 「大声では申し上げませんが……あの、同室にいらっしゃいます、筋骨隆々の方が、勇者様とお見受けしております」

 「……あ、やっぱり解っちゃいます?」

 「軟弱者に世界は救えません。鬼神の如き肉体美、決意を秘めた厳しい眼光、まさしく勇者の名に恥じぬ雄姿でございます」

 はたから見たら、あっちが勇者に見えるのは間違いない。いつか、そんなブレイドさんの羨望が本物の勇者を見て幻滅へと変わる日も来るやも解らん。が、大会の結果次第ではヤチャが勇者ポジションに収まるシナリオもあるのかと思い、とりあえず相手に話を合わせてみた。それはともかく……。

 「ブレイドさん。ペンダントも返ってきてないんですが……」

 「今回、ペンダントにつきましてはお持ちいたしましたが、物言いが入りまして……」

 「おいどんのペンダントじゃあ!ペンダントじゃあ!返してもらうぞい!」

 「うお……誰ッ?」

 ブレイドさんのセリフを割って、見知らぬ老人が横から会話に乱入してきた。ビックリながらも状況は把握できたが、更に老人は早口で説明をくれる。

 「それ、そりゃあ、おいどんのおいどんのペンダント、いつも胸から下げておるぞい!孫がくれた大事な孫が大事なペンダントじゃあ!盗られた悪いやつに盗られたペンダント孫のペンダント!」

 「……と、こちらの方がペンダントをなくされたと申告されましたので……持ち主同士でお話をされた方がよろしいかと思われ、お連れいたしました」

 「あぁ!おいどん、いつも胸から下げとるペンダント、胸からなくなって盗られたのじゃぞい!それそれ、おいそれ、おいどんのに決まっておるぞい!ペンダント!」

 ろれつが上手く回っていないのか、老人は微妙に韻を踏んだような喋りである。そうは言っても、押収されたペンダントが俺のものであることは明白である。では、老人のペンダントは……あ。

 「それ……ポケットに入っているのはなんですか?」

 「お……これが、おいどんのペンダント!やった!やった!見つかったぞい!」

 「あぁ。お連れして正解でございました。これにてペンダントはトキメイ殿へお返しいたします」

 ポケットからペンダントを引っ張りだし、老人は大喜びで帰っていった。ブレイドさんの言う通り、これにて運命のペンダントも無事に戻ってくるのだろうが……一体、今の一連のやりとりはなんだったのだろう……。


                               第59話の3へ続く


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