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第58話の5『走法』

 一旦、霧のようなものが深くなり、それが晴れてくると今度は道場の中にいる俺とヤチャが映し出され、師匠と対峙しているのが見えた。

 『2人でかかってくるがいい。わしに一発でも攻撃が当たれば、合格じゃ』

 ああ。よくあるハンデつきの手合わせか。そう思った矢先、ヤチャが負け確定なセリフを飛ばしながら駆け出した。

 『ボクたちだって修行をつんだんだ!2人がかりなら、お師匠様にも対抗できる!はああぁぁぁ!』

 あえなく、ヤチャは師匠にねじ伏せられ、師匠の足の下敷きとなった。映像の中の俺は冷静に構えながらも、微妙に足先だけ浮かせてたたずんでいる。

 『どうした?次はテルヤ。お前じゃぞ』

 その言葉を聞くと、映像の中の俺は静かに戦闘態勢を解き、視線を道場の窓辺へと移した。

 『……俺は戦わない』

 『なに?』

 『テルヤァ!負けを認めるのかぁ!情けないぞ!』

 ヤチャが悔しそうに叫んでいるが、映像の中の俺は目を閉じたまま続ける。

 『……今の俺達では、師匠に一撃を与えられない。力量差は一目瞭然だ。だから、俺は戦わない』

『……ほう。では、敵を前にして成す術もなく、ほうむられるのを待つだけか?』

『スッ……』

『……!?』

 次の瞬間、俺はヤチャを小脇に抱えていて、師匠は俺との間合いを取りつつ後ろに飛び退いていた。何が起こったのか、すぐにヤチャが解説を始める。

 『……テルヤ!足音を立てずに瞬間移動ができる、ジェットドライブ走法を!』

 『こやつ!左足を義足としつつも、ジェットドライブ走法をマスターしておったか!』

 『俺じゃあ、あんたには勝てない。だが、仲間を助けて逃げるだけなら……できる』

 『……やっぱり、テルヤってスゲェや』(こうして、力量差を自覚しつつも実力を見せつけ、テルヤは師匠の試験に合格したんだ。一方、ボクはテルヤの足を引っ張ってばかりだった。思えば、この時からボクは勇者にはなれない。そんな気がしていたんだ。でも、いつも仲間を一番に考えて動くテルヤを尊敬していた。そんなテルヤの役に立ちたい。その一心で、ボクはテルヤと一緒に修行を続けていたんだ……)

 そこまで語ると、部屋の中の霧は消え、回想は終了した。回想したことで疲れ果てたのか、ヤチャとヤチャの上にいる仙人は眠っている。彼らをセガールさん、ゼロさんと一緒にベッドへ運ぶと、ゼロさんは俺に一つだけ尋ねた。

 「……勇者。ジェットドライブ走法が使えるのか?」

 「そうみたいですね……」

 その際、回想に幾らかの捏造があったことを説明したのは言うまでもない。


            第58話の6へ続く


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