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第58話の2『相談』

 「いや、災難だったわねぇ。あちし、応援するわっ!」

 「せめて、セガールさんがニセ勇者だってバレてるのが解っていたら、もう少し早く交渉できてたんですが……間が悪かったですね」

 恐らく、セガールさんがニセモノだと解った上で、アマラさん達は勇者の情報を得るためにニセ勇者を泳がせたのだろう。俺が勇者であることを最初に告げていれば事はスムーズだったのだけど、それはそれでバレると大事になる可能性も高いから迂闊には話せなかった。そこはセガールさんに愚痴っても仕方ないし……とりあえず、みんなに相談しよう。

 「お……おにいちゃーん」

 待ち合わせ場所などを決めておかなかった為、部屋を予約した宿屋の前で待っていたところ、ルルルが妙に元気よく走ってきた。出会い頭、なにか言いたい事がある様子である。

 「……なんで、こんなことになったのん?」

 「はめられたのだ……大人の陰謀にな」

 「では、勇者は大会に参加するのか?」

 ルルルやゼロさんも表彰式を見ていたようで、俺が直面している問題についての会話もスムーズである。正直、ルルルあたりは来る素振りだけで表彰式を見に来ないと思っていたから、4人そろって見に行っていたことが驚きであった。それはいいとして、先程のゼロさんの質問については、答えは一つである。

 「俺が大会に参加すれば、英雄の証があるからシードで出られるらしいです……まあ、俺は出ますよ。自信はないですが」

 「オレサマも出るぞおおおぉぉぉ!」

 ああ、そうか。オーブさえ戻ってくれば、俺が優勝する必要はないのか。すると、ヤチャが出場してくれるのは心強い……が、他の出場者の強さが全く想像できない上、ジ・ブーン戦で負傷しているヤチャに過度な期待はかけられない。それに、もしアマラさんたちが参加者にいたら、それこそ優勝自体の難易度が計り知れない。

 「ヤチャ……無理しないよう頑張ろうぜ」

 「おおおぉぉぉぉ!」

 さっきまでは本当に気が滅入るほど悩んでいたのだが、こうして話してみるとなんとかなるような気がしてくるから不思議である。ただ、気持ちだけ救われたものの俺が大会に出る事実は変わらない訳で、それを念頭に置きながら今日は眠ろうと思う。そういえば、みんなはご飯を食べたのかな?

 「俺とセガールさんは晩ご飯を済ませたけど、みんなは食べました?」

 「うわぁ……あたちが何も食べてないのに先に食べてる……」

 「別に食べててもよかったのに……」

 「だってムキムキが早く会場に行きたいって聞かんから……」

 やっぱりルルルは乗り気じゃなくて、ヤチャが見に行きたいと申し出たのか……あんまりセリフが多くないからヤチャの内心が解らないが、俺との仲は結構いいのかもしれない。

 ルルルたちがお腹を空かせているとの事なので、俺たちは夕食を求めて宿屋の食堂へ向かった。やや夕食時を逃しているせいか、テーブル席は八割近くが空いている。まだオーダーはできるのかと、俺はシェフらしき人に尋ねてみた。

 「あの、まだ食べれますか?」

 「ああ。アマラさんから聞いたよ」

 「……な……何をですか」

 アマラさんの名前を受け、またしても俺は警戒ながらに返事をする。なんだろう……。

 「あんたら……」

 「……」

 「……事件に巻き込まれたんだと?お代はもらってる。飯はタダでいいぞ」

 「……あ……ありがとうございます」

 あ……やっぱりアマラさんって良い人かもしれない。そう一瞬でも考えた俺、割とチョロいのかもしれない。肝に銘じよう……。


                             第58話の3へ続く


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