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第56話の5『立派なエレベーター』

「では、表彰式にて登壇する2人は、上層へと案内しよう。他の方々は……街の見物などいかがかな?」

 俺とセガールさんが表彰を受ける該当者であり、他の人たちは表彰式の時間まで自由時間となる。できれば俺も街を気ままにブラブラしたい気持ちではあったが、式の出席を拒否できなかったが為に観光は後々のお楽しみにしておこうと思う。

 「はい!表彰式は、どこでやるのじゃ?」

 「今夜、天空闘技場にて執り行われるだろう。急な決行であるから、見物人は少ないんじゃないかな。君たちも花火が鳴ったら、一般用エレベータで闘技場へおいでよ」

 ルルルの質問に対し、アマラさんが式の詳細を告げる。闘技場の大きさや規模は解らないが、お客さんが入れるくらい大々的に表彰されるのか。一人での参加だったら緊張で胃が潰れたかもしれないが、セガールさんを巻き込んだ分だけマシ……いや、2人で登壇して恋人同士だと思われたら、それはそれでイヤではある。

 式の途中で声を出したりするといけないので、キメラのツーさんはルルルへと預けた。その後、ゼロさんやヤチャとは街の中で別れ、俺とセガールさんはアマラさんの案内で街の中央へと向かった。

 「まず、君たちをセントリアルの姫であるサーヤ様の元へと通そう。街の上へ向かうには、こちらからが早いだろう」

 壁際には階段も見受けられるが、アマラさんは小さな部屋の扉をカギを使って開き、部屋の中へと俺たちを招き入れた。扉が閉められると、うすぼんやりとした光が室内に灯る。なんとなく部屋の正体が予想できたところで、アマラさんが操作盤のようなものに指をつけた。

 「発射直後、やや圧がかかる。舌を噛まないようにね」

 そんなアマラさんの簡潔な注意が入った後、部屋にはシャトルの打ち上げよろしく強いGがかかった。強い重力が俺たちの体を襲う。

 「うわっ!」

 俺たちの乗っている部屋は音もなく急上昇を始めたようで、俺は重力に耐えられず、尻もちもつけず、成す術なく背中から倒れ込んだ。セガールさんに助け起こされている内、分厚そうなガラス窓からは外の様子があけすけとなり、遠くの山まで覗けるほどに部屋の高度が上がっていると解った。徐々にエレベータはスピードを安定させていき、やっと俺もセガールさんも口を開く事ができた。

 「あう~。舌は噛まなかったけれど、耳の中が痛いわ~」

 「アマラさん。これが、エレベータなんですか?」

 「ああ。魔力式エレベータは、我が国の開発者が作り上げた技術の結晶だ。少量の魔力を与えると、それを増幅させ運転を開始する仕組みだよ」

 きっと、これも博士が作ったものなんだろう。しかし、レジスタにあったエレベータ……らしきものは全く形が違った為、この世界でも魔法を使える人はごく限られているのだと思われる。

 そういえば、さっきアマラさんはセントリアルの姫に会いに行くと言っていたけど、王様とか女王様じゃなくて姫様なのは何故なんだろうか。出会ってから無礼がないよう、そこについてもうかがってみる。

 「王様ではなく、姫様に会わせていただけるんですか?」

 「既に、この街に王はいないよ。それだけ、次世代への期待は高い。ゆえに、姫は結果を出し続けていらっしゃるお方だ」

 「そうなんですか」

 王様も女王様もいない上、国を名乗ってすらいないのに近隣の町を傘下にしつつ、街レベルの大きさを誇る空中要塞まで持っている底知れない街である。アマラさんは非常に強くて偉い人に見えるのだが、この街の尺度では、どのくらいのポジションなのかも疑問である。そんなことを考えていたら、セガールさんが都合のいいパスをくれた。

 「……姫様、弱い人には優しくて、強い人には怖いわよ。あちし、ぐいぐいくる女の人って嫌い……嫌いじゃないわ」

 多分、この街で勇者を名乗っていた際、ぐいぐいと迫られて色々と追及されたのだと思われる。ただ、アマラさんがいる手前、最高権力者を悪くも言えないから濁したと見られる。このセガールさんの発言に便乗して、俺は無害なアピールを交えてアマラさんに質問してみた。

 「よかったー。俺、弱いんですよ。アマラさんくらい頼りがいがあると、姫様の反応もひとしおですかね?」

 「ああ……うん」

 アマラさん……笑顔のまま黙ってしまった。普段から、姫様に何をされているというのか。


                                第56話の6へ続く

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