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第55話の1『物品』

 《 前回までのおはなし 》

 俺の名前は時命照也。恋愛アドベンチャーゲームの主人公なのだが、気づけばバトル漫画風の世界に飛ばされていた。赤のオーブ、青のオーブを手に入れ、次の魔王四天王の情報を探しつつ、近くの街へと向かっている。

 

                    ***


 「お手洗いと、カウンターに隠れていた男も含め、これで全員だね?」

 アマラさんは引き車の中にいる黒服の男たちも探し出し、犯人全員をワイヤーでしばった上で引き車の開いている部屋へと隔離している。乗客より強盗した持ち物も押収しているが、それらは金品や財布など種類に分けて袋に詰められている。なお、犯人が全て男性という事もあり、被害にあったのは男性用の部屋だけらしい。しかし、ちゃんと持ち物は返してもらえるんだろうか?

 「つかぬことをお聞きしますが、それは返してもらえるんですか?」

 「ああ。一度、こちらで全て管理した後、君たちには名前や乗車の目的、盗難品の詳細を記入して被害届を出してもらう。それらと盗難品を照会し、正しく持ち主へ返却したい」

 確かに……この場で物品を返却すると、何かしら渡し間違いが起こる可能性はある。奪われた物を記憶違いする人も出てきかねないし、後々のトラブルを回避する上では大切なことかもしれない。

でも、所持金がない状態で街へ行くのは辛い。せめて、財布だけは返してもらいたいと要求してみる。

 「俺達7人、セントリアルまで行く予定なんですが、お金がないと街で野宿するはめになりそうでして……」

 「それは困ったね。う~ん……じゃあ、お小遣いあげるね」

 のちのち経費で落ちるのかもしれないが、ほんの軽いテンションでコインをくれた。それは今まで見た事もないような虹色のコインで、かなりな額のものだと思われる。試しにコインを仙人に見せて小声で聞いてみた。

 「これ……いかほどの価値がある代物なんですか?」

 (……半年は遊んで暮らせる)

 「ダメですよ!こんなにもらえません!」

 「大丈夫!私はお金持ちだから!」

 いつか、お金があると心が寛容になるなどと俺は考えたが、ここまでお金が余りある人だと一つ次元が違うのだと実感した。奪われたお金を返してもらった後、使ったお金は若干の利子をつけて返そうと思う。

 アマラさんは物品整理と事情聴取で忙しいと見られる為、俺たちは自分たちの部屋へと戻って流れる景色でも眺めていよう。そう思い廊下を歩いていたら、今度は逆にアマラさんから呼び止められた。

 「ちょっと……キミキミ」

 「……どうされました?」

 「……押収品の中に不審なものを見つけたんだが、持ち主に思い当たるところないかな?」

 「えっと……ちなみに、どんなものです?」

 「実物を見せると危険が生じる可能性があるのだけども、青色と赤色の宝玉。それとペンダントだ」

 ……さっきから聞かれたらどうしようと心配はあったのだが、やっぱりオーブとペンダントについて質問を受けてしまった。正直に話したところで怪しい者だと思われ警戒されるかもしれないし、万が一にも危険物所持の疑いで警察に引き渡されるのも嫌である。というわけで……。

 「事件のせいで頭の整理がついていなくて、そこまでは……」

 「そうだね。すまない。街への到着まで休んでくれたまえ」

 どちらにせよ、あとで追及はされると思うのだが……せめてゼロさんとルルルが一緒なら、なにか話し合いにおいてもフォローをくれるだろう。そこで、今は問題を先延ばしにするのが得策と判断した。俺が逃げるように廊下を歩き出すと、すぐに再びアマラさんに呼び止められた。

 「あぁ。キミキミ。もう一つだけ、いいかな?」

 「えっ……な……なんですか?」

 「……押収品に食べかけのミカンがあったんだけど、生ものは預かれないんだ……いる?」

 「それは持ち主を知ってるので返しておきます……」

 ニセ勇者いわく、それは赤のクリスタルである。一応、セガールさんに返しておこう……。

 

                                        

                                 第55話の2へ続く


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