第51話の1『集合』
《 前回までのおはなし 》
俺の名前は時命照也。恋愛アドベンチャーゲームの主人公なのだが、気づけばバトル漫画風の世界に飛ばされていた。長きに渡った海の世界の冒険の末、俺たちは魔王四天王であるジ・ブーンから青のオーブを奪い取った。
大爆発、瓦礫の屑れる音が水のフィルター越しに届いていて、俺とゼロさんは体育座り姿勢でいるであろうジ・ブーンのヘソの辺りから動けず、その騒ぎがおさまるのを待っていた。視界はジ・ブーンの内側から発せられている青色の光にさえぎられており、まだまだ何も見えてこない。
そんな俺の手にはジ・ブーンから奪い取ったオーブが握られている。その俺の手をゼロさんの手が上から握っている……と思われるが、まぶしくて見えないから触感でしか解らない。常に妙な浮遊感が俺の体へと伝わっていて、次第に目の前をさえぎる光は白色へと変わっていった。
「……あれ?」
ささ波の小さな音が聞こえる。いつの間にか俺は陸地の上にいて、すぐ隣には俺の手をつかんだまま目をつむっているゼロさんがいた。空には月と太陽が同時に見えており、新鮮な空気が俺の喉に入ってくる。
「ゼロさん……無事ですか?」
「……ああ。ここはどこだろう」
俺はゼロさんを助け起こしつつ、立ち上がって周りを見てみた。足元は土……ではなく、青白くて硬い何かだ。見覚えがある。これは……ジ・ブーンの体だ!
「勇者様!ゼロ様!ご無事でございますかー!」
ジ・ブーンは仰向けの状態で海に浮いており、その胸板へ乗る形で俺たちは海面上にいた。そこへ、城の最上階へ向かってもらっていたルッカさんの声が聞こえてきた。ルッカさんは俺たちの眼下の海を泳いでいて、メダカさんやコンブさん、仙人も一緒だ。すると、その下から大きなものが浮上してくる。
「城が爆発したぜー!みんな、ボクの中にいるかぁー?」
「イクラ!どこいった!イクラ!」
「船長!ここにいるイクラ!あと俺、クラゲだイクラ!」
クジラ丸さんだ。クジラ丸さんが皆の無事を確認している中で、ギザギザさんがクラゲさんを探している。あまりの大事だった為か、ギザギザさんはクラゲさんの名前を間違えて呼んでいる始末である。
クジラ丸さんに押し上げてもらい、みんなも自然とジ・ブーンの体の上に乗り込む。王子様、姫様、ギザギザさん達、未だ放心しているヤチャ、ルルルもいるな。全員、無事だ。それを確認している内、姫様を背負ったまま王子様が話しかけてこられる。
「勇者。それが青のオーブなのかい?」
「おそらくは……」
「おお、お見事!そして、敵将は……」
「足元です……」
「……おお。陸地ではなかったのか」
やっぱり、大きすぎて何なのか解っていなかったらしい。自分たちの乗っている物の正体が明らかとなったところで、みんなの視線がジ・ブーンの顔へと向いた。当のジ・ブーンはというと、俺たちに興味がないとばかりに白い目で空を見上げている。
「こうなってしまったからには、ここまでした訳を聞かせてもらわないとね。どうして、僕たちの城を奪ったりしたのかな?」
王子様の質問が聞こえているのか、ジ・ブーンは目玉だけを動かして俺たちを凝視した。そして、ゆっくりと口を動かした。
第51話の2へ続く