『紡ぐ』
夜明けの光、夕暮れの輝き
雨雲の走り、移ろう季節の中に
身をおき木の葉が繁るころ
ふいに耳の奥から
湧き上がってくる音がある
それは、パリパリ………とも
ペリペリともつかない、
かすかな、かすかな音♪
小学校の通学路は農道に近い砂利道で
桑畑が広がっていた。
学校の授業でも蚕を飼ったけど
個人的にも、おかいこさん好きで、
木の葉が風にそよぐのを見ると
蚕たちと過ごした”季節”を思い出す。
※以後、蚕はカイコと記す。
因みに蚕は、おかいこさんと呼ばれていました。
桑の葉をあたえるとカイコたちは
パリパリと小さな音をたてて食べる。
新鮮な桑の葉しか食べない贅沢もんで、
近所の桑の木から失敬するのだが
同じ木ばかり千切ると
(´-ω-`) バレル、
毎日、桑の葉を求めてウロウロしてる
小学生を大人が気づかぬわけもなく
そのうち農家でも根をあげて
1本の木を取ってもいいよと
お許しをもらったりもした。
おカイコさんの肌触りは
上質なシルクそのもので、
丁度、もち肌の麗しき乙女の柔肌を思わせる。
さわり心地が好きで、手の甲に乗せたり
頬ずりしたりと可愛がってはいたが、
触り過ぎると死んでしまうという
デリケートなところもある奴だった。
カイコたちが音をたてるのは、
葉を食べるときだけではなく
カイコたちが繭を作るとき、
糸を吐きだす音がする。
カイコの入った箱を枕元に置いて
眠ると箱の中から
「ペリペリ………パリパリ」と
かすかな音がする。
懸命に糸を吐きだしながら
わが身を包んでゆくカイコ
でき上がったばかりの薄い膜の中で
しきりに身をくねらせ
「パリパリ」とも「ペリペリ」とも
いえない不思議な音をたてながら
繭になってゆく。
目をとじて
その音をききながら眠りにつく
夢の中で………
わたしはカイコになっていた。
外界から閉ざされた、
まあるい、まあるい繭の中で
生きとし生けるものたちの
尊き生命が紡がれる。
わたしも子猫のように
まあるく、まあるくなって眠った。
はるか遠いむかし………
母親の子宮に包まれ無垢なる赤子に返り
愛情という糸で紡がれ、
まあるい、まあるい夢をみたのだろう。
ほんとうは”カイコ”の写真を用意しましたが、
虫、嫌いな人に悪いかな?
と、遠慮しました。
カワイイんだけどね♡
(笑)