『魔性の剣士』
初めての、創作作品です。
色々と至らない所ばかりだと思いますが、読んでいただけると嬉しいです。
書き終わり次第、次話を投稿していきたいと思っていますので、ご意見とご感想の程、よろしくお願いします。
稲沢創は、暗闇の街を歩いていた。
そう、ただ単に街中を歩いていただけなのだ。それなのに、いきなり背後から斬りかかられた。
とっさの判断で(固有魔装)《デバイス》を発動させると、後ろ向きのまま襲撃者の(固有魔装)を受け止める。
「誰だ? 後ろから斬りかかるなんて……マナーがなってないね」
そんな事を言いつつ、創が後ろを振り返ると……、そこには、斬りかかった姿勢のまま固まっている、美少女がいた。
年は、16歳ぐらいだろうか。
暗闇の中で、月明かりを浴びながら、燦然と輝く銀髪。整った顔立ちと、透き通るような白い肌が、その存在を際立たせている。まるで、西洋人形のようだと、創は思った。不覚にも、その一瞬で創の視線は、少女に釘付けにされてしまった。
食い入るようにその少女を見つめていると、その顔に見覚えがある事に気が付いた。
その少女の名は、アリス・アナスタシアだった。
はっ? と創は思った。自分の名前が悪名として広まっているのは、創自身が重々承知しているが……。
まさか、(アナスタシア公国)《大陸一の国家》の第一皇女であるアリス・アナスタシアにまで、闇討ちをかけられるとは……。僕、なんかやっちゃったかな……、なんて心配を抱きながら、創は恐る恐る口を開いた。
「あの……お姫様が、僕なんかに何の用があるんですか?」
わずかな沈黙の後、(アリス)《お姫様》は、こう問いかける。
「貴方が、噂に名高い『魔性の剣士』ね」
「あぁ、貴女も噂を聞き付けて挑んできた感じですか?」
ともすれば、挑発にさえ聞こえる口調で、創は臆する事なくそう問いかける。
「へぇ、私の正体を知っていてなお、そういう態度をとるのね」
アリスは、普段のお姫様のイメージからは想像できない、不敵な笑みを浮かべると……、いきなり斬りかかった。
くっ、と創は内心で歯噛みしながらも、余裕の態度を崩さずに、アリスの斬撃を次々と受け流していく。
不意討ちであったとはいえ、相手はお姫様だ。傷の1つも付けてはいけない。
厄介だな、と創は正直に思う。アリスは、何万とある大量生産型の(固有魔装)を使っている訳ではない。選ばれた(魔導剣士)《ウィザード》だけに与えられる、(聖剣)を使っているのだ。
創が、一回たりとも反撃をしないのを不思議に思ったのか、アリスは斬撃をやめ、口を開いた。
「あら、どうしたの? 『魔性の剣士』さん。貴方は、相手を気遣うような剣士ではないと聞いたのだけれど」
自分がお姫様だと自覚して言っているのか? と疑問に思うような質問をされた。この(お姫様)《アマ》は何をほざいているんだ?
「貴女はお姫様ですよ?! 気を使わない奴が、何処にいるんですか!」
ありったけの空気を吸い込んで、アリスに向かってそう叫んだ。
「というか、お姫様が、一体全体僕に何の用があるんですか!」
ともすれば、友人に声を掛けるかのような気軽な口調で、アリスは本題を切り出す。
「あぁ、そういえば用件を言ってなかったわね」
やっと本題に入れると思ったのも束の間、アリスの口から出てきたのは、とんでもない(用件)《馬鹿げた依頼》だった。
「『魔性の剣士』改め、稲沢創さん。貴方を、アリス・アナスタシア第一皇女の、正式な『騎士』として採用します」
かくして、私こと稲沢創の、波瀾万丈な毎日が始まったんだ。
読んで頂いた皆様、ありがとうございます。
これからも、応援して頂けると幸いです。こんな僕の作品でよろしければ、ご意見とご感想の程を、よろしくお願いします。