人はからかってはいけません、か?
私の心が和やかな状況のなか、殿下からいきなり質問が飛んできた。
「ところで、ミーシャ殿は少し痩せられたのでは?」
「え?」
聞き返した私が、機嫌を損ねると思ったのか慌てて付け足す。
王子様に相応しい金色の髪が、頭を降る度にサラサラと揺れる。
「あ、いや女性に対して失礼かもしれないけれど、前に見たときより少し全体的にほっそりとした気がして」
女性、と言われるほどの年齢でもないのだけれど。 と、精神年齢だけは2人より5歳ほどは上なのを自覚しながら返す。
「きっとこのところ食欲がなかったからかもしれないですわ」
「も、もしかしていまだに体調がよくないのでしょうか?」
慌てたように聞いてくるカーン様。
「いえ、最近いきなり暑さがやってまいりましたでしょう? 少し体が慣れるのが遅れているだけですわ」
「そうでしたか、安心いたしました」
「ふふ、ありがとうございます」
心の底からホッとしたようだった。
いい子なんだけどなぁ……、やっぱり恋愛感情は湧きそうにない。
改めて彼の顔をこっそり、バレない程度にじっと見てみる。
茶色い髪に、澄んだ茶色い瞳。
顔の造形も隣の殿下と比べると、少し負けてしまうけれど……それでも十分綺麗な顔で。 まぁ、ゲームではヒロインの恋人になるんですもの、綺麗な顔なのは当たり前ともいえるのかしら。
「あの、もしミーシャ殿が嫌でなければ今度果物でも贈らせてもらえませんか?」
「あらカーン様、とっても嬉しいですわ」
「よかったです。 では近いうちに必ずお届けいたしますね」
「ありがとうございます、楽しみにしています」
「よかったなカーン、帰ったらすぐに市場に行かなければな」
「は?」
「あらカーン様が直接お探しになるのですか?」
「え?」
「そりゃあ婚約者への贈り物だからな、本人が選ぶのが一番だろう」
「そ?」
「ますます嬉しいですわ。 カーン様、とっても楽しみにしていますね」
「あ、はい。 ぜひ美味しい果物を沢山探して来ますね」
「頑張れよ、カーン」
途中から殿下がお話に入ってきて、からかい交じりにカーン様に提案なさる。
私もつい一緒に賛成してしまい、急な展開にしどろもどろになっているうちに話はまとまり、半ば強制的にカーン様がご自分で果物を探して下さることになった。
カーン様って、からかうと楽しいかも……。
そのあとも、カーン様と殿下と少しお話をしてからお二人は帰っていった。
「はぁー楽しかった」
お二人が帰ったあと応接間から自室へと帰ってきた。
そんなに長い時間話していたわけではないけれど、同年代の子と久しぶりに話せてとっても楽しかった。
「そういえば最近、誰にも会ってなかったわ」
前世の記憶が気になっていたのもあるけれど、最近の暑さのせいもあって、家から出て行こうという気力が湧かなかった。
「さすがにこれから夏中誰にも会わないわけにはいかないわよね」
ならば家から出ず、相手を呼べばいい。
「今度、お茶会でも開こうかしら。 お母様に相談してみましょう」
こうして、今度ストップ引きこもりイベントが、開かれることになりました。




