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こんなときは気晴らしです

お母様からトゥーリ子爵の話を聞いて数日が経った。

あれからは、追加情報を聞くこともなく平穏な日々を送っていた。

の、だけれども。


「き、気になるわ」


一度は現実に起こることか分からないから、と心の隅にしまい込もうとしたけれど、やっぱり一度ゲームのことに関係のある話を聞いてしまうと、どうしてもそのことにばかり考えがいってしまう。

あの日以来、日課の裁縫も手につかずぼうっとして過ごすことが増えてしまっている。

いっそその後の話をお母様に聞いてみたい気もするけれど、今までこういった噂話に一切興味のなかった私がいきなり興味津津で聞くと、変に思われないかしら?


「はあ……、聞くにしても心の準備なんて全く出来ていないし。 少し、気晴らしに外でも行こうかしら」


心の準備とは? と聞かれても自分自身何の準備かはよくわからなかったけれど、ここ数日私の頭を支配しているトゥーリ子爵家の存在は、どうにか振り払うべきなのはわかる。

私は、侍女を連れて街へと出かけることにした。





「あら、お姉さまお出かけですか?」


玄関ホールまで出てきた時、妹のサーシャが2階へつながる階段から声をかけてきた。


「サーシャ。 ええ、今から少し街を散歩しようかと。 一緒に行く?」

「ええ、ぜひ! 少しだけ待っていて下さい」


嬉しそうに声を弾ませながら、返事をしながらすでに自室へとかけていく。

……お母様に見られたら、また叱られるわよ。



言葉どおりにすぐに部屋から出てきたサーシャ。

先ほどと何も変わっていない外見に何故一度部屋に戻ったのか疑問に思ったけれど、まあいいかと気を取り直し、姉妹で仲良く街へ出かけていく。




貴族御用達の店が立ち並ぶ通りをゆっくり歩きながら、気になった店があれば入り商品を見たり、美味しそうなものがあれば買っていった。

ある程度見終わった今は、お気に入りのカフェで一休みをしている。


「はあー、久しぶりにお姉さまとお出かけ出来て楽しかったわ」


甘くて冷たいココアを一口飲み、そう言ったサーシャ。

本当に嬉しそうに言ってくれるものだからこっちまで嬉しくなる。


「うふふ、最近は2人とも家にこもってばかりだったものね」

「毎年とはいえ、この時期は雨ばかりで嫌になっちゃうわ」

「まあ、そんなこと言わないの、慈悲の女神様に聞かれたら罰があたるわよ」

「んもうお姉さまったら、お母様みたいなことを言うのね。 でも罰が当たるのは嫌だわ、女神トゥリ様ごめんなさい」


謝りながらも分かりやすく口をとがらせたサーシャに、くすくす笑うとつられるようにしてサーシャもすぐに笑顔になる。

毎年この時期は雨が続く。

それはこの世界を見守る神の一柱、慈悲の女神トゥリが乾く大地を癒しているからと言われている。

しかし、私の前世の世界では違った。

梅雨、という現象で雨が降っているだけ。 女神の存在など少しも信じられていなかった。


「……ま? お姉さま?」

「え?」

「え、じゃないわ。 どうしたの、いきなり黙ってしまって」


心配そうにのぞきこまれる。


「ごめんなさい、ついぼうっとしてしまって」

「全く、お姉さまったら」


安心したように溜息をつくサーシャ。


「なんだか、最近よくぼうっとしている気がするけれど、なにか悩みごとでもあるの? 私でよかったら聞かせて下さいな」

「そ、そんな、悩みなんて大層なことではないの。 本当よ?」

「本当の本当?」

「ええ、本当の本当の本当」

「……そう、なら分かったわ。 お姉さまが違うっていうのならもう聞かないけど」


聞いてほしいことがあったらいつでも言ってね?

そう言ったサーシャの顔が、とっても真剣だったのでそんなにも分かりやすく最近の私はぼうっとしていたのかしら、と申し訳ない気持ちになる。


「ありがとう、サーシャ。 ええ、困ったことがあったら真っ先にあなたに相談するわ」

「よかった、絶対よ姉さま。 約束」

「ええ、約束」


これは前世と一緒……と思いながら妹でもあり、年の近いこともあって一番の親友ともいえるサーシャと、小指を絡ませて約束をした。



あけましておめでとうございます。


今年……も?から?よろしくお願いいたします(..)

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