魔導書
時は変わって夜の10時…廊下はしーんとしていている。こんな夜中に部屋の外にいるのは大体見回りの騎士くらいだろう。僕は見つかるのが嫌だから部屋を出てからずっとスキル≪気配遮断≫を使っている。だって、見つかったら面倒になること間違いない!うん、そうだ!そうに違いない!しかし...今の僕って盗賊ぽいのだが気のせいだろうか?
そんなこんなで無事に図書館に到着!フー...短くて長い道のりだった...だが、私は遂にやったのだ。さぁ今こそ始まる僕の時代が!
図書館の扉の取っ手を握り、開k…
「今日も疲れた~あれ?何かにぶつかったような...」
図書館の中から出てきた管理人は周囲を見るが誰もいなかった。
「う~ん、気のせいか...最近忙しかったし、疲れているのだろうか?今日は早く寝るとしよう」
そう呟くとどこかへ行った。一方、僕こと黒野は急に扉が開いたことにより顔面をぶつけて悶絶していた。
あれはアカン!誰もいないと思って、開けようとしたらまさかの不意打ち!?痛すぎて泣けてきた...でも、声は出さなかった。えらいだろう!...僕は誰にいっているのだろうか...
痛みとは違うことで泣けてくる黒野だった…
****
「いててぇ...」
大分痛みが引いてきたので僕は立ち上がって図書館の中に入り、昼の続きを始める。
「来たのはいいけど、ほとんど昼のうちに探したな...」
腕を組んで唸りながら悩みだす。怪しいと思った場所を調べたから、実際はほとんど探すとこないんだけどなー。う~ん.........あっ!
「そういえば一か所だけ本が取り出せない場所があったっけ?」
思い出して手をポンと叩く。あれは確かこの世界にきて一週間の時だったかな。僕は訓練が終わって図書館へ通い、いつも通り本を手に取り、読んでいた。もちろんこの時も謎の声は聞こえてきていたけど、まあそのことは置いといて。一つの本が読み終わり、別の本を読もうとしたが、何故かその本は取ることは出来なかった。まるで本棚に固定されているかのように。そのときはあきらめて違う本を読むことにしたけど今思えばあの本だけがおかしかった気がする。
「もう一度あの本を見てみるか」
目的の本を見つけるために動き出すが…
「あれ?あの本はどこにあったかな」
三週間くらい前の出来事だったのでどこに置いてあったのかはほとんど覚えていなかった。
「...地道に探すか」
探すとは言ったがここは図書館なので数万冊くらい本が並べてある。つまり、あのときの本を見つけられる確率は数万分の一となるのだ。
「......」
途方もない作業に泣きそうになる自分に鞭を打って行動を再開した…
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あれからどれくらいの時間が過ぎたかは分からない。時に泣きたくなったり、時にあきらめそうにもなった。だが、僕はようやく件の本を見つけることに成功した!
「フー、疲れた」
見つけた達成感で今までの疲れがドッときたから地面に腰を下ろして休むことにした。
結局一つの本を見つけるだけに全部の本を取り出すことになった...僕がここまで運がないのはナゼダロウ。取り出した本は戻すと分からなくなるから後ろに放り投げていた。だから、僕の後ろは数万冊の本が積み重なって一つの山となっている。塵も積もれば山となるということはこういうことだったのか...うんうん、勉強になった。しかし、この状態を管理人が見たらどう思うだろうか。絶対にこれをやった犯人を許しておくはずがない。最悪、管理人に殺されるかも...
「早めに終わらせよう...」
ここから逃げるために早く用事を終わらせることを決意する。ちなみに本があった場所は図書館の奥の本棚で高さは自分の身長の真ん中に位置する所だった。
「さて、どうしようか」
ただ気になったから探しただけでその後のことは何も考えていなかった。あれ?マジでどうしよう…
「と、とりあえず、近くで見てみるか!」
本の近くまで寄ろうと歩いていく。
ここで僕は一つ見落としていたことがあった。現在の視界状況は暗闇のせいで足場がどうなっているかが正確には分かっていない状態だ。しかも、さっきまで本をそこら辺に投げていたので床は本で散らばっている。その結果…
「へぶッ!」
足場にあった本を踏み、滑ってそのまま本棚に衝突した。手はちょうど件の本の位置にあって衝突と同時にちょうど本を押し込む形となってしまった......
「えっ?」
疑問に思ったとき、突然、本棚がゴゴゴッと音を出し始めた。
「何が起きているんだ!?」
驚いて本棚から後ずさった。本棚は音を立てながら少しずつ横に移動していく。
「...」
僕はぶつかった痛みのことは忘れて、その光景を呆然と見ていた…
****
音が止むと同時に動きを止める。そして、本棚が元あった位置には地下へと続いている階段が出現した。
一方、僕は本棚が止まってフリーズ状態から再起動する。
「この本は地下への階段を出現させるカギだったのか...」
どこか釈然としない気分になる。転んだ拍子に偶然みつけたって...ねぇ?
「素直に喜んでいいのか分からないけど、ひとまず進むか」
底が見えない階段を下りていく。ここの石の階段はいつくらいに作られたのは分からないけど石の風化具合を見ると100年くらい前に出来たのかな。城が建てられたのもそれくらいだから同時期に出来たのか...一体この下には何があるのだろう?王国の秘宝?それとも伝説の武器?どちらにしても楽しみだ!
黒野は当初の目的、謎の声の正体を見つけることをすっかり忘れて宝探しの気分ですすむのであった…
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「おっ、出口だ!」
階段の道が終わり、ちょっと広い空間に出る。先ほどの薄暗い階段とは違い、ここはまるで外にいるかのように明るかった。
「たぶん原因はこれだと思うけど」
足元の地面を見やる。そこには謎の文字の羅列、魔法陣が地面全体に広がっていた。その魔法陣は外にいる時と変わらないくらい強く光を放っていた。
「最初の召喚される際は魔法陣を見ていられなかったけど、こうして見てみると幻想的だな」
このままずっと見ていたけど、それより先ほどから魔法陣の中心に気になるものがある。それは...
「本?」
何故か魔法陣の中心に古そうな黒い本が置いてあり、不思議にもそれ以外はここには何もなかった。もしかして、あれだけなのか?もっと宝物っぽいものを期待していたのに本が一冊だけとは...
「はぁ...」
がっかりしてため息をつく。今の気持ちはゲームでガチャを引いたとき、金色の玉が出て「おっ!これは当たりでは!?」と思ったら、中はハズレでしたと宣告されている気分だ。
「はぁ...何でこんな古そうな本しかないのかな。別に僕は聖剣や王国の秘宝クラスの物が欲しいとまでは言わないよ...でも、こんな中古本、誰が欲しいと思う?本マニアみたいな人なら欲しがると思うけど...生憎中古本はそこまで好きじゃないから、ゴミになるだけだね。あーあぁ、ここまで来たの『さっきから古いやら、中古などうるさいわ!!』にどうしようかな...えっ?」
一人で文句を言っていると突然声が聞こえてきた。驚いて周囲をみるが誰もいない。
「気のせいか...」
『気のせいではない』
やはり、気のせいではなく、声は先ほどみたいに聞こえてきた。でも人影が全然見えない。
『お主はどこを見ているのだ?儂はここだ』
「いやいや、ここじゃ分かんないし!」
『仕方ないの...ほれ、魔法陣の中心におるじゃろ』
言葉に従ってそちらの方に向くがやはりいない。あるのは中古本だけだ。これはからかっているのか、それともさっきまで喋っていたのはこの本なのだろうか?
「まさか、本が喋るはずないよな...」
『正確には本じゃなくて魔導書なのじゃがな』
えっ、マジでこの本が話してんのかよ!まさかとは思っていたが本が喋るとは...流石ファンタジー。そう言えばこの声どこかで聞いたことがあるような。えーと、どこだっけ...あっ!
「もしかして、図書館で本を読んでいたとき、ずっと声をかけていたのはお前か?」
『いかにも』
謎の声の正体がこの魔導書だったのか...でも、ここからどうやって声を届けたんだ?そもそもこの本に声帯があるのか?うーん...謎だ!
「どうやって声を出しているの?」
ということで悩んだときは聞くのが一番。決して考えるのがメンドクサイわけではない!
『それは、念話を使ったのだ』
「念話?」
『そうだ。念話というのは直接、脳に言葉を伝えるものだ。しかも、少し離れていても届くのじゃ。現に今も使っておるじゃろう』
う~ん、確かに頭に直接声が響いているような気が...本当にこの魔導書は一体何がしたいんだ?
「一体僕を呼んで何がしたいの?」
『儂はお主と契約して封印を解いてもらうために呼んだのじゃ』
魔導書はそう答えた。