『 桃色探し 』
「桃色のドロップなの。あれがないと、あれがないと」
何億ものドロップで出来た海の上で、その少女は泣いていた。
……何億もの、ハートの形の桃色ドロップの上で。
「これじゃ、ダメなのかな?」
何気なく一つ拾って差し出すと、少女はとんでもない速度でびっくりする勢いで拳を振り回してきた。
ドロップを持ってた僕の左手が恐ろしい衝撃に襲われ、桃色ドロップが彼方にぶっとんで。
「それは、桜色、でしょ」
そんなこんなで三時間強。
ピンクのハートに視界を支配され、僕の左手が腫れ上がった頃になって、彼女は突然何かを思い出したらしく。
「あ、星だった。桃色ドロップは、星の形だったの」
なんて事を言いやがりまして。
ん?
……ほし、星。
星の形をしてて、ピンク色で。
「……」
さっき口の中で溶けて消えた甘さが、呪いのように蘇った気がした。
ああ、なんてこったい。