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プロローグ

「お兄ちゃん、このご本を読んで欲しいの」

 幼い少女が差し出した古い本を、少年は笑顔で受け取った。白い埃を被ったこの本を少女はいったい何処から探し出してきたのだろう。表紙を手の甲で拭うと、ようやく表題が姿を現した。

「君は本当にこのお話が好きだね」

「ねえ、読んで」

「はいはい、わかったよ」

 文字もろくに読めないくせに、よくこの本が解ったなと少年は苦笑いした。

 少年が本を机の上に置いて丁寧に貢をめくると、少女は椅子の上に立って少年の肩越しに本を覗き見た。少年はそんな少女のために、文字を指で追いながらゆっくりと読み上げていく。本を読んでいる間、少女の瞳はずっと星のようにきらきらと輝いていた。

「はい、おしまい」

 締めくくりの言葉を少年が囁くように言うと、少女は夢から覚めたように数度またたきをする。それから寂しそうに眉を八の字に曲げた。

「おしまい?」

「この本はここでお終い。でもね、この本の続きはまだこの世界の何処かにたくさんあるはずだよ」

「どこにあるの?」

 食い入るように少女が身を乗り出し、少年がその髪を優しく撫でた。

「さあ、それは僕にはわからないよ。だから探しておいで。そしたら続きも読んであげる」

 少女は先ほどまでの憂いを取り払い、ぱっと表情を輝かせた。勢いよく椅子から飛び降りて、出口へと駆けていく。からん、と扉の鈴が気持ちの良い音を鳴らした。

「やくそくだよ!」

 少女は髪をぴょこぴょこ跳ねさせながら、そのまま何処かへと走っていく。その後ろ姿を見ながら、少年は笑みを漏らした。

「さて、大冒険の始まりだね」

 扉の向こう側には、きっと無限の世界が待っているよ。


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