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「ありがとう、すげぇ嬉しい!」
少し声が震えてたけど気づかれなかったようだ。
「喜んでくれて良かった。」
そう言った義兄貴の笑顔は数倍綺麗に映った。
それからしばらくはお互い無言だった。
秋の風を感じながら虫の声に耳を傾ける。
そんな穏やかな時間に身を委ねていると、
「お前はこの家が…いや、父さんと義母さんが好きか?」
唐突に質問を投げかけられた。
まさか義兄貴の口からそんな言葉が出ると思わなかったからとっさに声が出せなかった。
返事の出来ない俺を見て、忘れてくれと自嘲気味に言って話を切り上げる。
その表情は、少しだけ泣いているようにも見えた。