第2話:変わった学校生活
学校に行く途中、二人は可奈と待ち合わせをした公園に向かった。
公園に着いたが可奈はまだ来ていなかった。
「ゴメン、おくれて」
可奈があわてて走ってきて二人のところにきた。
「おはよう可奈」
「おはよう由紀」
可奈は、呼吸を整えながら朝のアイサツを交わした。それから男の子になった勇樹を見た。
「おはよう可奈さん」
「おはよう、男の子になった優子」
可奈にそう言われた勇樹は、心に針を刺されたような痛みを感じた。
「わたしだって、好きで男の子の服を着ているわけじゃないわ」
「だから学校に着くまで男の子のフリをしなくてもいいのよ。わかったかしら優子さん」
「そうよ。だから今はわたし達の妹の優子よ」
「由紀お姉様や可奈お姉様にそう言われて、わたしうれしいわ」
優子は満面の笑みを浮かべた。
優子は学校に着くあいだ、年下の女の子の様に二人に甘えた。
学校が見えると優子の顔色が変わった。優子は男の子にもどりたくはなかった。そんな気持ちをわかったのか、由紀はあるアイデアが浮かんだ。
「そうよ、演じるのよ。学校の中では勇樹になるのよ」
「由紀それってどういう事なの。優子はもともと勇樹じゃないの」
「つまりわたしは男装して勇樹を演じていると、そう言いたいのでしょう由紀お姉様」
「正解よ優子。そう思うと少しは気が楽になるでしょ」
「由紀それっていいじゃない。さすが本当との姉弟ね」
「もうすぐ学校に着くからわたし、じゃなくてぼくは先に行くからね、由紀お姉様」
「学校の中では優子は由紀のお兄ちゃんなんだから」
そういって優子は先に学校に入った。
四年生になって三人は同じクラスになった。でも可奈は優子が教室に先に行くとはどういう事なのかと由紀に聞くと、
「実は優子、立って用を足せなくなったのよ」
「それって、いつも座ってしてるってこと」
「そう。だから誰にも見つからないように、いつもわたし達のクラスから離れた所で用を足しているのよ」
「それで休み時間になると帰ってくるのが遅いのね。かわいそうな優子」
二人がクラスの中に入ると、勇樹が席に着いていた。勇樹は部活の課題をしていた。
「お兄ちゃんなにしてるの」
「何って、今日は家庭科部のある日だから雑巾を提出するだろう」
「やばい、全然やってない。由紀もモチロン」
「ええ、やってないわ」
「いばっていう事ないだろ由紀。後でぼくも手伝ってあげるから」
「ありがとうお兄ちゃん」
「勇樹くんは由紀にはあまいのよ」
「可奈さんのも手伝ってあげるから」
「ありがとう勇樹くん」
三人がなかよくしゃべっていると、いきなり教室のドアが勢いよくひらいた。
教室に入って来たのは、二人の六年生だった。
二人の六年生は教壇のうえにたった。
「はじめまして四年二組の諸君。我々はわが学校の生徒会の一員である。
だからきみ達に命令をする。出席番号八番、二十四番、四十番は手をあげる」
呼ばれた番号の中に勇樹の番号も含まれていた。
勇樹が手をあげると六年生は言った。
「今日の放課後、生徒会の役員室に出席をすること。返事は」
番号を言われた勇樹達三人は返事をした。
六年生は教室から出て行った。
「お兄ちゃん。どうするの」
「やっぱり行かないとヤバイだろうな」
「でも生徒会が、勇樹くん達に何の用があるのかしら」
勇樹は放課後、理由がわからないまま役員室に行き、由紀と可奈は家庭科部のある部室にむかった。
「という訳でお兄ちゃんは部を欠席します」
由紀は家庭科部の部長に、勇樹が部活へ出れない事を説明した。
「わかったわ。でも生徒会は一体何をするつもりなのかしら。それから由紀さんが提出した雑巾のことだけど」
「何かモンダイでも」
「この雑巾勇樹くんに手伝ってもらったでしょ」
「どうしてお兄ちゃんがしてくれたか、わかるの」
「由紀さんの雑巾は雑に縫っているからよ。勇樹くんの雑巾を手本にして、もう一度作りなおして」
それを聞いた可奈は、クスッと笑ったが、
「あなたもよ可奈さん。あなたの雑巾も由紀さんと同じで雑に縫っているのよ」
二人はもう一度最初から雑巾を縫いはじめた。二人が悪戦苦闘しながら雑巾を縫っていたが、下校時間になって雑巾を縫い終わった。
二人が部室の片付けをしていたら勇樹がやってきて、二人にこう言った。
「ぼく女の子になっちゃった」