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第10話:お姉様の秘密。

中原勇樹から中原優子になってから、勇樹はとてもうれしかった。

学校では女の子として扱われるので、朝の朝礼では女の子の列にならび、出席番号も女の子として呼ばれ、女の子として授業を受けたのであった。

勇樹がちょっとでも女の子らしくない行動、たとえば座ったときに足が開いたり、男の子みたいなしゃべりかたをしたら、女の子なんだから女の子らしくしなさいと怒られた。


でも中には、ちょっと言い過ぎじゃないかという声もあがったが、


「でもわたし、女の子になったばかりだから、お姉様達に注意されてすごくうれしいの」


そう勇樹がいうものだから教室では、


「僕たちもこれからは、勇樹くんを優子ちゃんと呼ぶようしよう」


「そうよね。だって私たちの妹なんだから」


といって勇樹を優子と呼ぶようになり、女子や一部の男子から妹のように可愛いがられた。


そして放課後になると、劇の練習がまっていた。

それは勇樹を女の子らしくさせるため、葵と詠美による厳しい特訓でもあった。

「ダメでしょそんな動きでは。とても女の子にみえないわよ」


「そのしぐさはなに、まだ男の子の癖がなおってないよ」


「そのセリフの発音が女の子らしくない」


このように勇樹は葵に怒られてばかりだった。休憩の時でも油断をしていると、


「もっと女の子らしく座りなさい」


「男の子みたいなしゃべりかたはやめなさい」


「おしとやかに振る舞いなさい」


今度は詠美から怒られるのであった。でも葵も詠美も勇樹を本番までに、完璧な女の子のようにしなくてはならないのであった。

「ねぇ由紀、最近優子ちゃん何か変わってない」


ある日、由紀は母親の由香里にそうきかれた。


「優子がどうかしたの」


「ちょっと色っぽくなったというか」


「ママ、そんなの気のせいじゃないの」


「そうよね。やっぱり気のせいよね」


でも由紀は、勇樹が少しづつだが女の子らしくなっていくのがわかってきた。それはやっぱり、家の中や学校でも女の子らしく振る舞うようになったからだと由紀は思った。


「もうすぐお風呂だけど、先に由紀が入るの」


「ちょっとまってママ。私後にするから」


「あらそう。じゃ優子ちゃんから先に入るようにいってね」


由紀は、風呂を勇樹から先に入るように勇樹の部屋の前にきてドアをノックして中に入った。

勇樹の部屋は女の子の部屋そのものだった。

カーテンはフリルのついたピンク色で、本棚には少女マンガがきちんと整理していてあった。

そしてベッドの上では、疲れきった勇樹がヌイグルミを抱いて寝ていた。由紀は勇樹の寝顔を見た。勇樹の髪はこの前、美容院にいってからは髪を切っていないので、髪は長く伸びていた。だから勇樹の顔が女の子っぽい顔つきをしていた。

由紀はおもわず勇樹の髪をなでた。それは犬や猫を可愛いがるような愛情のあるなでかただった。

由紀が髪をなでていると勇樹が目を覚めた。


「もう起きる時間よ優子。ママがお風呂が沸いたから先に入るようにといってたわ」


「由紀お姉様、わかりましたわ」


勇樹は眠たそうに目をこすりながら、風呂に入るしたくをした。勇樹は、ある事に気がついた。それは由紀の手が切り傷だらけだった。


「由紀お姉様、その手はどうしたのですか」


「ああこれ、これは家庭科部で服を作ったときにできたから」


「エッ、由紀お姉様、それほんとなの」


「なによ優子、その驚いた顔。私だって服ぐらい作れるから、はやく風呂に入りなさい」


由紀は照れながら勇樹にいった。

由紀は勇樹の部屋を出て、自分の部屋にもどった。部屋に入ると、これが勇樹にばれなくてよかったと由紀は胸をなでおろした。



そして、劇が開くのが一週間後にせまった。


この日は、衣装合わせだった。

それぞれが、自分達の役を演じる服を着ていた。


「全員の衣装が行き届いたようね」


「俺のこの衣装、そでがちょっと短いけど」


「私のはスカートの丈が長いわ」


「しかたないでしょ。この衣装は、ボランティアの人達が作ってくれたのだからモンクいわないの」


詠美が手をパンパンとたたいた。音を聞いて詠美に注目した。


「みんなの衣装を渡したけど、細かい手直しとかは自分達で直すように」


全員が、わかりましたといった。詠美が衣装を着て、練習をはじめようとしたとき、


「あのぅ、衣装がまだ届いてないのですけど」


詠美に声をかけてきた。詠美がその声のしたほうをみると、声をかけたのは勇樹だった。


「私の衣装がまだなんですけど」


勇樹は、いまにも泣きそうな声をだして詠美のところにきた。


「やっぱり、私が男の子だから、女の子の衣装が着れないというのですか」


「それはちがうわ優子ちゃん。そんなことはないからね」


「それでは、なんで」


「その事については心配なくてよ」


葵がそういって、勇樹と詠美のあいだに入ってきた。

「もうすぐしたら衣装が届くから」


その時だった。ドアが勢いよくあいた。そこには由紀と可奈が勇樹の衣装をもって立っていた。

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