第1話:いつもの朝。
朝の6時に目覚まし時計がなり、優子は目がさめた。優子は目覚ましを切ると、鏡を見てほほ笑みを浮かべながら、
「おはよう優子」
と鏡に向かって朝のあいさつをした。それは由香里のアイデアで、そうすると優子がより女の子らしくなるからと言って、朝の日課となっていた。優子が部屋からでて、由香里のいる台所ヘ向かった。
由香里は台所で朝食の用事をしていて、優子は由香里に朝のあいさつをした。
「由香里お母様、おはようございます」
「おはよう優子ちゃん。今日も早起きね」
由香里は優子の頭を撫でた。優子は由香里に、年下の女の子のように扱われれるのが大好きだった。朝食は由香里といっしょになって作るのが、優子の日課だった。
「優子ちゃんが手伝ってくれるから、朝食を作るのが楽しいわ」
「だってわたし、お料理作るのが大好きだから」
由香里は、優子に今度はたまご焼きの作り方を教えてあげると優子に言った。
それを聞いた優子は、
「ありがとう由香里お母様。わたし一生懸命たまご焼きを作って、優子お姉様やパパに食べてもらいたいな」
「優子ちゃんが作るモノだったら、パパはなんでも食べるわ。あらもうこんな時間だわ。 優子ちゃんパパを起こしに来てあげて」
由香里に言われて、優子はパパを起こしにいった。
「パパ起きて。朝ですよ」
優子に起こされたパパこと中原雄太郎は、なかなか起きてくれなかった。
「パパはやく起きて、はやく」
雄太郎は、優子の甘えた声で起こされるのがうれしくて、わざと起きないフリをしていた。
「あと三分、優子ちゃん」
「何があと三分ですって」と由香里が言った。
「はやく起きて、顔を洗ってくるのよ、あなた」
「わかった、すぐいくから」
雄太郎は、ベッドを後にした。雄太郎は朝食を食べるために席に着いた。優子が朝食の用事をしている姿を見て雄太郎は、優子の女の子らしさに感激した。
雄太郎は会社人間で家庭に関心がなかった。
それが変わったのは優子のお陰だった。
実は雄太郎は、最初は勇樹の女装は反対だった。でも勇樹が優子になってから、雄太郎の態度が変わった。それは、優子があまりにも可愛かったからで、雄太郎は優子に会いたさに、早く帰るようになった。
「やっと起きたのね、パパ」
優子は雄太郎お父様と呼ぼうとしたが、優子にはパパと呼ぶように言った。雄太郎は、もし女の子が産まれたらパパと呼ぶように言ってもらいたかった。
だから由紀にもパパと呼ぶようにさせた。
「優子は女の子らしくなって、パパはとてもうれしいよ」
「パパにそう言ってもらってうれしいわ」
「おはよう、パパに優子」
「由紀お姉様おはようございます」
「なんだい由紀その頭。すごい寝ぐせじゃないか。鏡を見たらどうだい」
雄太郎にそう言われて、由紀は鏡を見た。
確かに由紀の寝ぐせはひどかった。でも由紀は気にしなかった。
「由紀も女の子なんだから寝ぐせを直したらどうだい」
「だって朝は忙しいもの」
「それなら由紀も、優子ちゃんみたいに早起きしたらどうなの。
はやく朝食を食べましょう。それから後片付けはわたしがするから優子ちゃんは食べ終わったらはやく着替えるのよ」
朝食を食べ終わると、由紀と優子は着替えにいった。由紀は着替えるのがはやかった。
でも優子は着替えるのが遅かった。最近になって男の子の服に着替えて勇樹になるのが苦痛だった。だからわざとゆっくり服を着替えた。
「ママ、パパ行ってきます」
元気に家を出た由紀にたいして、男の子に戻った優子は小声で、「行ってきます」
と言って家を出た。
「あの事があって、優子は男の子にもどるのがイヤみたいだけど」
「そうなのよ。優子ちゃんいつもイヤそうな顔をしていたわ」
由香里と雄太郎は、優子の気持ちが痛いほどわかっていた。