第11話:答えは……
「あははは……わかっちゃった?」
「うん。流石に」
金髪を掻きながら苦笑する沙和さんに、僕は小さく頷く。
「どうしてわかったのですか?」
「えっと、全然邪魔をしてこなかったのもあるけど、みんなして理由をつけてはゴールを迂回して避けてたから。それで」
「やっぱあれは露骨だったよなぁ。ま、俺以外にもそういう事をする奴がいるなんて、思ってもみなかったけどよ」
僕が千麻さんの質問に答えると、喜世さんはため息を漏らし天を仰ぐ。
その反応はやらかしたって感じだ。
「やっぱり、初心者相手だったから気を遣ったの?」
今回の件で、僕が考えた理由はこれだった。
確かにビギナーズラックもあったけど、正直僕のゲームへの理解不足もあって、ある意味勝負としては分が悪い。
きっとみんなは、そこを気にしてくれたんじゃないかなって。
僕の質問に、申し訳無さそうに答えてくれたのは瑠音さんだった。
「それもひとつありますわ。でも、貴方が罰ゲームのカードを見た時に思いましたのよ。本当はこのゲームが嫌なのではないのかしらって」
……あ。しまった。
やっぱり普通に顔に出ちゃってたのか。
「ご、ごめん」
「気にすんなって。こっちが勝手に気を遣っただけだしよ」
「そうですよ。それより、私達のせいで逆に気分を悪くしませんでしたか?」
こっちの様子を窺う喜世さんや千麻さん。
気分が悪いなんてことはなかった。気遣ってくれるのは嬉しくもあったし。
でも、同時にこうも考えちゃってた。
みんなは確かに特別な友達だと思ってくれてる。
だからこそ、僕をずっと気にしてくれて、僕相手に慎重に行動してくれてるんじゃないかって。
実際スキンシップの時だって、急な時もあったけどできる限り理由を説明してくれたし、無理強いはちょっとって思ってくれたし。
ご飯の件だって、買い物はこっちの自業自得なのに、それでもみんなが僕のためにって行動してくれた。
……だからって、今はそんな気持ちを口になんてできない。
みんなの厚意は無駄にできないし、僕のためにしてくれたことなんだから。
「ううん。むしろ気遣ってもらえて嬉しかったよ。ありがとう」
僕がそう笑顔で返すと、みんなは安心して胸を撫で下ろしてる。
そんなみんなを見ながら、僕は一人心の中で考えていた。
……僕はどうやったら、みんなに対等に扱ってもらえるような存在になれるんだろうって。
◆ ◇ ◆
夜も七時を過ぎた頃。
みんなで一緒に作った夕食を楽しんだ僕達は、玄関に集まっていた。
流石にいい時間だし、今日はここでお開き。
彼女達は帰り支度を整え、既に荷物を持ち靴を履いている。
「みんな。今日は本当にありがとう」
「別に。私達が押しかけただけ、気にしなくてもいいわよ」
「とか言ってるけどー。るとっちってただシチュー掻き回してただけじゃん?」
「な、何を言ってますの!? ちゃんとゲーム機も用意したし、買い出しの足も用意しましたわ!」
「たしかにな。『これはこれ、それはそれですわ!』なんて言って、壁ドンせがんでたしよ」
「うぎぎぎっ!」
瑠音さんが沙和さんと喜世さんにからかわれて、顔を真っ赤にしながらハンカチを口に加えひっぱりながら、ヒステリーを起こしてる。
でも、僕から見たら瑠音さんだって十分頑張ってた。
お嬢様だけあって料理をしたことがないはずなのに、一生懸命手伝ってくれたりしたし。
「瑠音さん、そんな顔しないで。僕は本当に感謝してるから。色々とありがとう」
「……そ、そう。それならば、構わないわ」
僕がそんな本音を伝えると、さっきまでの逆上から一変。彼女は普段のようにツンッとそっぽを向いた後、横目にこっちをちら見しながらそう言ってくる。
何となく瑠音さんって、こういう態度の方が彼女らしくっていいよね。
「優汰君」
「何? 千麻さん」
「今日は寝不足なんですから、シャインズ・ゲートに入ったりせず早く寝てくださいね」
「うん。そうするよ。心配かけてもいけないし」
みんなが帰るってわかってちょっと気が抜けたのか。
確かにちょっと眠いし、今日は無理しないでおこう。
「でもー、できたら明日はインしてほしーなー。そろそろ本格的にゲームも始めたいしー」
「そうだね。夜には入るようにするよ」
「えへへっ。楽しみにしてるね!」
沙和さんがギャルっぽい笑顔を見せると、みんなも釣られて笑顔を返してくれた。
「じゃあー、みんな、行こっ。優くん、またねー」
「また明日、ゲームでお会いしましょう」
「それじゃ、失礼するわね」
「いいか? 早く休めよ」
「うん。それじゃ、みんな。またね」
僕が笑顔で小さく手を振ると、みんなも軽く手を振り返してくれる。
そしてそのまま玄関を出たみんなは、閉まったドアの向こうに消えていった。
……ふぅ。終わった。
別に汗を掻いたわけじゃないけれど、僕は額の汗を拭うように腕で擦ると、玄関の鍵を掛けそのままリビングに戻りソファに腰を下ろした。
さっきまでみんながいたせいか。すごく広く感じる部屋。
普段だったらこれが普通なのに、今日に限ってはどこか物悲しくも感じる。
……でも、本当にTOP4と会ってたんだよね。ここで。
しかも、腕を組まれたり、膝枕されたり……って、思い返すと流石に恥ずかしいかも。
顔が熱くなったのに気づいて、僕はソファの背もたれに仰け反るように身を預けぼんやり天井を見た。
……みんなは特別な友達。
みんなが望むんだったら、多少恥ずかしくてもああいうスキンシップをして仲良くしてはいたい。
だけど、同時に変に気を遣われすぎている気もしてて、それがやっぱり申し訳なくもある。
TOP4にふさわしい友達って、どんな感じなんだろう?
もっと積極性があって、包容力があって、みんなの前でも堂々としてる、そんな相手かな?
僕とは真逆にも感じるけど、だからってあまりネガティブになったら駄目だよね。
喜世さんも言ってくれたんだ。自身を持てって。
僕なんかなんて言葉で、自分を卑下しちゃだめ。だとしたら……。
眠かったはずの頭が、いつの間にか冴えてくる。
ただ、それでもすぐにその答えが出てくるわけもない。
「……こういう時は、お風呂に入って早く休もう」
そう。みんなに心配をかけないためにも、済ませることを済ませてさっさと寝よう。
僕は自分にそう言い聞かせると、頭をスッキリしようと一人お風呂に入る準備を始めたんだんだけど──結局、ベッドに入るまでずっと、この事を考えちゃってたんだ。




