8歩目 女子会は踊る。
桐木君と橋まで散歩をした日から数週間経った。あれからも私たちはたびたび一緒に散歩をしている。行先も決めず適当に歩くことも多いけどそれもなかなか楽しい。博物館へはまで行っていない。夏に企画展があるからせっかくならそのときに行こうということになった。
写真フォルダを眺め少しにやける。
「最近楽しそうだよね。めぐめぐ」
私のことをめぐめぐと呼ぶ彼女は大学で新たにできた友人、清水かほだ。学部学科が同じということもあり一年のころから仲良くしている。一年のころはよく彼氏との惚気を聞かされていたがどうやら最近別れたらしい。
「そうかな?特に変わったことは起きてないけど」
嘘だ。桐木君との関係を詮索されるのはめんどくさい。
「男でしょ」
「ぐふっっ!!」
飲んでいたお茶を吹き出しそうになる。
「図星だ」
「は?え?全然そんなことないけど?なにを根拠にそんなことを言ってるの?全くもって事実無根なんだが?」
「ふふ。簡単な推理だよワトソン君」
誰がワトソンだ。
「容疑者は最近スマホを見てはよくにたにたしている。さらに普段はなかなか投稿しないSNSになんてことない風景の写真を投稿することになった」
「そ、それは単に自然を慈しむようになっただけでは…」
「いや、容疑者は根っからのインドア派。そう簡単に自然に目覚めるとは思えない。」
彼女はかけてもいないメガネをクイっとあげる動作をした。
「男でもできない限りね」
「その推理は少々飛躍してはないですか?」
「そうかもしれない。だが先ほど容疑者にかまをかけたことで確定した。というわけで犯人は君だっ!ワトソン君!!」
「助手を犯人にするのはどうなんですか探偵さん」
「まあ、そういうこともある」
そんな適当に犯人扱いしてほしくないんだけど。
「とにかく男とかできてないから!最近よく散歩するようになっただけだよ」
本当だ。嘘は吐いていない。
「ええ~?怪しいな~?男できたんじゃないの。男。恋バナしようぜ~!ご飯食べ終わって次の講義まで暇じゃん!」
「最近破局したばかりなのによく恋バナしたいなんて思うね…」
「だからこそでしょ。自分の恋愛が終わったからこそ他人の恋愛が気になるのよ」
そう言って彼女は私に指を向けた。
そういうものなのか…私は他人の恋路なんて気にならないけど。
だからかほちゃんの恋愛話を聞いてるときも私は適当に相槌をして受け流していた。
「それにさ。私は心配なんだよ。めぐめぐが悪い男に引っかかってないか」
「そんな。桐木君は悪い人なんかじゃ…」
そう桐木君は悪い人なんかではない。今も昔も変わらず良い人だ。
「へ~。桐木君っていうんだ。彼氏の名前」
かほちゃんはこっちを見ながらにたにたと笑った。
「は、謀ったな!?」
「いやいや、完全に墓穴掘っただけでしょ」
「いやでも、本当に桐木君とはそういう関係ではなくて!たまたま最近再会した幼馴染ってだけで、ただ一緒に散歩をするようになっただけっていうか…」
「ふーん。それでちゅーはしたの?」
「ぐへっっ!!」
私は再びお茶を吹きこぼしそうになった。
「なっ、なんで急にそんな話にっ…!」
「だってやってること完全にデートじゃん!!偶然再会した幼馴染とってのもポイント高いよ!めぐめぐに10ポイント贈呈します」
なんかいきなりポイント制度導入されたんだけど。そのポイントってコンビニでも使えますか?
「それでその桐木君って人はどんな人なの?顔は?」
「かっこいい」
「性格は?」
「優しい」
「これからも一緒に?」
「いたい」
「べた惚れやんけ…」
引くなよ。そっちが訊いてきたんだろ。
それにこれ以上取り繕っても無駄なんでしょ?だったら開き直ってやろうじゃないか。
「そうだよ!好きだよ!大好きだよ!でも片思いなの!?なんか悪い!?」
「悪くないです…それにしても欠片も男っ気のなかっためぐめぐにも好きな人ができたかー!うーん、春ですねぇ…」
「もう初夏に入ろうとしてるよ…」
「日本の春は短すぎる!!」
「楽○モバイル?」
一体なんの話をしてるんだ私たちは。
「まあまあ、この百戦錬磨の恋愛マスターかほさんに相談したまえって!」
「恋愛で百戦錬磨って最低でも99回破局してることになるけどそれでいいの?」
「100股してる可能性もまだ残ってるよ」
それでいいのか…?
「まあ、いいか…桐木君と散歩するようになったのはつい最近のことで──」
第8話 女子会は踊る。
後編へ続く




