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41歩目 曇天過ぎ去りとっくに晴天 

 あれから企画展を見終わった私たちは他の常設展示も見て回った。お魚コーナーでは実際に水槽があってそこで魚が泳いでおり、博物館に来たのにも関わらずプチ水族館としても楽しめた。また少し進んで海の生態コーナーに行くと空中にはサメやらイルカやらの大型海洋生物の模型が浮いていてそこらのサメ映画以上の迫力があった。他にも植物コーナーに、宇宙コーナー、恐竜コーナーなんかも巡り現在は外に出ている。この博物館には野外施設もあるのだ。


「いやー、今年の夏はびっくりするくらい過ごしやすいね」


 今年の夏は例年と比べてかなり涼しい。冷夏というやつだ。いつもは熱風のようにも感じた風も今はただ心地よい。


「歩きやすくて助かるよ」


 少し歩いて芝生広場に来た。この広場はなだらかな傾斜があり下まで行くと池もある。

 ここに来た瞬間いろんなことを思い出した。遠足でお弁当を食べたこと、友達と追いかけっこしたこと、四葉のクローバーを探したこと。これがノスタルジーというやつかと思いにふける。


「私 昔ここで友達とバトミントンしたなー。懐かしいよ」


「俺は友達とキャッチボールしてた。でもサイトで下見してたときに気づいたんだけどここホントは遊具全般持ち込み禁止なんだよね」


「えっ!?そうだったの!?でもそっか、たしかにトラブルのもとになるか」


「最近になって禁止になったのか、それとも昔は見逃されてただけなのか、真相は闇の中」


 やけに仰々しく言ったな。


「ていうかかえで君キャッチボールとかしてたんだね。なんか意外」


「俺をなんだと思ってるの。結構普通に男子小学生やってたでしょ。昼休みだって校庭いって遊んでたし」


 たしかにそうだ。それで転んでるところ助けてもらったりしてたんだった。


「でもなんかイメージ湧かないんだよなー。斜に構えてる感があったというか」


「もっと言葉選べなかったの…?まぁ確かにドッジボールするときは大体最初から外野にいて内野にボール渡すだけの係やってたけども」


 うーん、やっぱり斜に構えてた。


「かえで君ってあれだよね。ライヴハウスとか行ったら後ろのほうで腕組んで聴いてそうだよね」


「偏見がすぎる……」


「で、実際どうなの?」


「どうって言われても行ったことないからなんともね。でも正直その聴き方が一番かっけーとは思ってる」


「ほら!私かえで君のことならなんでもわかるんだよ」


 渾身のドヤ顔を見せた。


「へぇ~、じゃあいま俺が考えてることもわかる?」


 そう言ってかえで君は私の顔を見つめた。


 うっ…!そんな真っ直ぐ顔見られると照れるんですけど……


「わっ…私のこと、か…かわいいって思ってるとか……?」


 正直まったくわからないから半分ネタ、半分願望込みで言ってみたけど恥ずかしすぎるなこれ。


「……あたり…なんでこれはわかるんだか…」


 かえで君は顔を赤くしてそのままそむけた。


 ホントに当たっちゃったよ……


「あれあれ~!顔赤くなっちゃてるよ!」


 私も恥ずかしがってたことは棚に上げイジり倒すことにした。


「夏だからね。顔のひとつやふたつ赤くもなるよ」


「顔はひとつしかないし今年は冷夏だから暑くないけどね」


「……いや熱いよ」


 頑なに認めたくないらしい。仕方ない、ここはそういうことにしてあげるか。


「あのっ、めぐ……」


「じゃあかえで君」


 言葉が重なってしまった。


「めぐみちゃんからどうぞ」


「暑いんだったらあっちの池まで競争しないかって。あっちのほうが涼しそうだし」


 私は芝生の向かい側にある池を指しながら言った。


「池にいくのはいいとして走ったら余計暑くなるでしょ」


 うーん、至極真っ当なツッコミ。


「それでかえで君はなんて言おうとしたの?」


「なんでもないよ」


「え~っ!絶対何か言おうとしてたじゃん。なんでもなくないでしょ」


「いま言うことでもないかなって」


 そう言われると余計気になる。


「じゃあさ、あそこの池にある橋まで競争して私が勝ったら教えてよ」


「勝てると思って言ってるの?」


「負けると思って言ってると思う?」


 私だって今までの散歩で体力がついたから少しは速くなっているはずだ。かえで君のほうが長く歩いてるという事実からは一旦目を逸らすとしてだ。


「というかそれ以前にめぐみちゃん絶対辿り着く前に転ぶよ。断言してもいい。俺のサイドエフェクトがそう言っている」


「未来視のサイドエフェクト持ちだったんだ」


 まあ確かに緩やかとはいえ少し下り坂になっているから転びそうという意見はわかる。でも私だって成長している。そんな簡単には転ばない。この前転んだのは慣れない下駄を履いていたからで今は履き慣れたスニーカーを履いている。舐めてもらっちゃあ困る。


「じゃあスタートということで」


 私は一足先に駆け出した。


「ずっる」


 文句と共に少し遅れてかえで君も走りだした。


「これくらいのハンデかまわないで……うわっ…っと!」


 案の定というかなんというか私は転んだ。しかし芝生がクッションになってくれたおかげで痛いところはない。私はそのまま寝転んで空を見上げた。


「だから言ったのに」


 空に被さる形でかえで君が覗き込んできた。


「ほら、起きれる?」


 かえで君が手を差し伸ばしてきた。

 ふっ…やっぱりいつだって一番最初に手を差し伸べてくれるのは君だ。


「かえで君、空きれいだよっ…っと!」


「うわっ…!」


 その差し伸ばされた手を引っ張りかえで君も芝生に寝転ばせた。


「……ほんとだ…。綺麗……」


 今日の天気。晴れのち晴れ。明日以降もきっと晴れ。雲一つない晴天。空はただ青く澄み渡っている──



    第41話 曇天過ぎ去りとっくに晴天


最近の現実の夏は暑すぎてまともに散歩できないので作中は冷夏ですと言ってゴリ押すことにしました。

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