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38歩目 覚えてますか?

「そういえばかえで君ってウチの正社員になったの?」


 個人商店のウチに置いて正社員という言い方があってるのかはわからないが気になるところだ。


「いやバイトだよ。ちさとさんは正社員にさせたがってたぽいけどね」


 なるほど。それなら同じくバイトである私が正真正銘の先輩ということか。頼れるところを見せなくては。


「そか。それじゃあ早速仕事の説明始めるよ。まずは店の掃除から」


 今日からウチで働くかえで君にこの店のルーティンを教えることにした。


「ってあれ?もうきれい…?」


「小山ちゃん来る前にちさとさんに言われて既にやったからね」


 仕事が早いな。なんならいつもより店内きれいな気がするし。ああ、そういえばかえで君掃除得意なんだった。


「例のオートモードで掃除したの?」


「いやマニュアルだよ。オートは慣れた場所でしかできないから」


「なるほどね。それならここもいずれオートで掃除できるようになるわけだ」


「……かもね」


 しかしそうか掃除は終わってたか。商品の陳列はあとでやるとして次に教えることは……


「あっ、そうだ。レジ、かえで君レジの使い方わかる?」


「わかんないです」


 遂に頼れるところを見せられる。そう思った私は懇切丁寧にレジの使い方を教えた。


「──まあ大体こんな感じ。なにか質問はある?」


「これレシートなくなりそうなときはどうすればいいの?」


「替えならここの棚に入ってるよ。交換の仕方はね──」


 私はトイレットペーパーのような形状をしているレシートをレジからガチャンと外し、そして再度装填した。


「なるほど。ありがとう、完全にわかったよ」


 ふふ、やはり私の説明は完璧だったみたいだ。これで少しは先輩としての威厳が保てる。


「わかんないことあったら仕事中でもいつでも聞いてね。あと失敗しても大丈夫だから。この店の失敗は全部お父さんに押し付けられることになってるの」


「そんなシステムが……」


 厨房からお父さんの「え!?」という声が聞こえてきたがそれは無視しておこう。

 その後もこまごまとした仕事の説明をし、遂に開店の時間となった。


◇ ◇ ◇ ◇


「小山ちゃん……。ここのお客さんはいつもあんなに話が長いの…?」


 昼時のラッシュが終わり現在私たちは休憩している。かえで君は疲弊している様子だ。


「年寄りは話好きが多いからね。でもここまで長く話すのはなかなかないよ」


 ちなみの田舎の年寄りは意外と珍しいもの好きでミーハーな人も多い。そんなわけで新人であるかえで君は質問攻めにされていた。


「どこの子かって聞かれたときは答えに困ったよ。機転を利かせて自然と天気の話題にすり替えたから事なきを得たけど」


 これも田舎あるあるだ。年寄りはすぐどこの子かと聞いてくる。きっと年寄り特有の田舎ネットワークがあり情報を共有したいのだろう。


「自然だったかなぁ。だいぶ無理矢理ドリブルしてったように見えたけど」


 でも実際話は逸らせていた。どうやら若者と話ができるだけで満足らしい。満足してった年寄りはかえで君に飴玉を渡して帰っていった。レジで行われたそのやり取りはさながら物々交換のようだったが当然ちゃんと商品の代金は支払ってもらっている。


 そんな感じで仕事の話をしながら食事を取った私たちは午後からの仕事を再開した。


◇ ◇ ◇ ◇


「──それで…なんでお前がここにいんだよ」


「なんか突然和菓子食べたくなってね」


 昼休憩から戻ったら店には大崎君が来ていた。


「白々しい……。やっぱ言わなきゃよかった」


「そんなこと言うなって。その恰好も似合ってるぞ。写真撮ってやろう」


 そう言うと大崎君はスマホを取り出しかえで君に向けた。


「先輩。迷惑客です。出禁にしましょう」


「SNSにはあげちゃダメだよ。あとその写真私にもちょうだいね」


「りょうか~い」


「もしかして俺に肖像権ってないの?」


 うへへ、これでまたかえで君専用フォルダが潤う。

 その後大崎君はどら焼きと草団子を買って満足気に帰っていった。


「やっと帰ったか……」


「でもちゃんと買い物はしていったし完全な冷やかしってわけじゃなかったね。ていうか大崎君はかえで君がウチで働くの知ってたんだ」


「ん……まぁ流れでね」


 私には教えてくれなかったのに。ちょっと嫉妬だ。


 その後もかえで君はたびたび年寄りのお客さんに絡まれながらもレジ打ちや品出し、贈答用の包装作業などしっかり仕事をこなしていった。そして退勤時間が訪れる。


「おつかれーい。どうだったウチでの初仕事は」


 お茶の入ったペットボトルをかえで君の頬にピタッとくっつけて尋ねる。


「お茶ありがと。まぁそうだね。大変ではあったかな。お客さんによく話しかけられたし、その中に約一名余計な奴がいたし…」


 余計な奴とは大崎君のことだろう。その大崎君からは既にかえで君の写真が送られてきた。私的にはナイスだったよ大崎君。


「でも小山ちゃんにも結構フォローしてもらえてなんとか乗り越えられたしこれからもやってけそうかな」


「そか。それならよかった」


 これからかえで君と一緒にいられる時間がもっと増える。それは喜ばしいことだ。しかし私は今日かえで君がウチで働くと知ってから気になっていたこと一つある。


「あの…それで…覚えてる?」


「なにが?」


「ほら……その…私と付き合うの断った理由って働いてないからだったよね……だったら……」


 うっ……、改めて言葉にすると恥ずかしくなってきた……。


「……もちろん覚えてるよ。それより小山ちゃんこそ忘れてることあるよね」


 え…?私がかえで君とのことで忘れてることなんて一つもないと思うが。


「博物館。いくんじゃなかったの?」


「あっ……」



    第38話 覚えてますか?


6話及び8話参照。夏にいくことになってました。

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