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4歩目 これで勘弁してあげるよ

「到着。無事恐竜公園まで歩けたね小山ちゃん」


「だから言ったでしょ桐木君。このくらいの距離よゆーだって」


 自分の想いを再確認してからというもの話が頭に入ってこない。あれから自分の気持ちを誤魔化すように話を続けたが正直なにを話したか全く覚えていない。どれくらい歩いたかも覚えてないし、いつの間にか恐竜公園まで歩いてる始末だ。無事着けたのはよかったけど気持ちを切り替えなければ…


「あ、猫だ」


「え、猫、どこ!猫!桐木君!猫!どこ!!」


「ごめん。嘘」


「はぁ~!?なんでそんな嘘吐くの!?猫の発見虚偽申告は10年以下の懲役、または50万円以下の罰金だよ桐木君!!!」


「窃盗と全く同じ刑罰なんだ」


 いや、本当になんで意味もない嘘を吐くんだ。こっちは真剣に気持ちを切り替えようとしているのに!


「なんか心ここにあらずって感じだったからさ。どう?調子戻ったんじゃないの?」


 うっ…そんなにわかりやすかったのか私。というか本当に周りをよく見ているな桐木君は。もしかしたらこれ私の気持ちにも気づいてるんじゃないか?いや考えないようにしよう。

 私は誤魔化すようにピーチティーをごくごくと飲んだ。


「なんか俺ものど乾いてきたかも。ちょっと自販機寄るから待ってて」


「わかった」


 桐木君は自販機に寄り、スマホを取り出した。


 ネコpay♪ ゴトッ…


「いやいやいや、ネコpay使ってるじゃん!?電子マネー使ってないって言ってたよね!?」


「そうだっけ?」


「まあいいや。お茶代送金するからスマホ出して」


「え~。しょうがないなぁ」


 そう言うと桐木君はしぶしぶ送金を受け取った。

 なんで私がわがまま言ってるみたいになってるんだ。


「小山ちゃん。せっかくだからあれで遊んできたら?」


 桐木君がそう言いながら指をさした先には恐竜型の遊具がある。3mくらいの大きさのティラノサウルスに階段がついていて体内に入れるようになっていたり、トリケラトプスの体に穴が空いていてこどもが入れるくらいのスペースがあったりしている。あとついでに首が長いやつとか背びれがすごいやつとかもいる。

 小さいころはなんとも思ってなかったけど、よく見ると体にでかい風穴空けられててかわいそうだなこの子ら。


「これ小学生向けのやつでしょ」


「うん、だからちょうどいいかなって」


「どういう意味かな?桐木君」


 隙あらば私をこども扱いしようとしてくるな桐木君は。


「ほら。女性って若く見られれば見られるほどいいって聞くじゃん」


「何事にも限度ってものがあるんだよ」


 私があきれながらそう言うと桐木君はスマホを取り出した。


「じゃあせめて写真くらいは撮ってあげるよ」


「まあそれくらいならいいけどさ」


 桐木君は私にスマホを向ける。


「ほらポーズとって」


「ポーズって急に言われても…どんなポーズとればいいの?」


「うーん。恐竜のポーズ?」


 むちゃぶりを言うな。


「恐竜って何型(なにがた)の恐竜?大型?小型?それとも水中にいる系のやつ!?」


自由形(じゆうがた)で。じゃあ撮るよ。はいチーズ」


 え、もう撮るの!?まだどんなポーズにするか決まってないんだけど!?ていうか自由形ってなんだよ!?

 ええい、ままよ。と私は咄嗟に両腕を大きく上げた。


「フフッ…いい写真撮れたよ小山ちゃん」


 そんなことある?私両腕上げただけだけど。


「レッサーパンダの威嚇みたいで」


 そう言いながら桐木君が見せてきたスマホの画面にはティラノサウルスのそばで焦ったような顔をしながら両腕を上げている私が映っていた。


「バカにしてるよね!?私も写真撮ってあげるから桐木君もポーズとってよ!?」


「え、俺写真撮られるの苦手なんだよね。あれだよ写真撮られると魂抜かれるタイプの人間なんだよ」


「明治時代の方かな?」


 私だけ醜態を晒すのは割に合わない。是が非でも桐木君も撮ってやるからな。


「魂抜かれたら私が入れなおしてあげるから。ほらティラノ君も桐木君のこと待ってるよ」


「完全に捕食者の目してるけど。俺これから喰われるの?」


 文句を垂らしながら桐木君はしぶしぶといった様子でティラノサウルスのそばに寄った。


「じゃあポーズとって」


 私がそう言うと桐木君は両腕を大きくあげた。


「なんで真似するんだよ!?」


「俺はね。感銘を受けたんだよ。強大な存在と出会ってしまったら逃げることも立ち向かうこともできない。ただ虚栄を張ることしかできない。そんなメッセージを受け取ったんだ。これはリスペクトってやつだよ」


 なんかごちゃごちゃ言ってるけど真顔で両腕をあげてる姿はシュールだな。


「せめて笑いなよ」


「俺、作り笑い苦手なんだよね」


「はぁ、じゃあもうそれでいいよ。撮るよ。はいチーズ」


 画面には変わらず真顔のまま両腕を上げている桐木君が映っている。

 まあこれはこれで悪くないかな。でも──

 私はカメラをインカメに変え、桐木君のそばに駆け寄った。


 カシャッ──


 シャッター音が公園内に鳴り響く。


「今日はこれで勘弁してあげるよ桐木君!」


 画面にはしたり顔をしている私と焦ったような顔をしている桐木君が映し出された。


◇ ◇ ◇ ◇


「今日は楽しかったよ桐木君。なんもない田舎だけどそこで散歩するっていうのも悪くないね」


「ならよかった。俺も一人で散歩するより楽しかったよ」


 フフッ、こういうところは素直なんだから。


「ところでさ、小山ちゃん」


「なぁに?桐木君」


「締めに入ってるところ悪いんだけどさ。帰りも歩くことに気づいてる?」


「・・・あっ……!?」



    第4話 これで勘弁してあげるよ


◇ ◇ ◇ ◇


 帰り道にて


「あんよが上手。あんよが上手」


「はぁ…っ、だからっ…、こども扱いっ…するなっ…!!」


面白かったらいいジャン!してね

(星お願いします)

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